マクシム少佐をレギュラー主人公にした第一作「影の護衛」を読んで、ギャビン・ライアルという作家を見直したので、マクシム少佐以前の作品をもう一度読んでみることにした。ギャビン・ライアルは「影の護衛」以前の7作ではレギュラー主人公を持たなかった。ただ一作のみの主人公たちには、共通した特徴があった。
マクシム少佐をレギュラー主人公にした第一作「影の護衛」を読んで、ギャビン・ライアルという作家を見直したので、マクシム少佐以前の作品をもう一度読んでみることにした。ギャビン・ライアルは「影の護衛」以前の7作ではレギュラー主人公を持たなかった。ただ一作のみの主人公たちには、共通した特徴があった。
プリンス・マルコには、どうしてもお金が必要な事情がある。オーストリアのリーツェンの城の復旧が(CIAからのお金で)進み、ようやく一部で住めるようになったのだが、まだまだお金が必要なのだ。その上フィアンセのアレクサンドラ(毎回名前だけ出てくる美女!)は贅沢好きときている。
けれん味たっぷりの名探偵ではなく、地道な捜査をする普通人探偵を主人公に「樽」でデビューした鉄道技師F・W・クロフツも、やがてレギュラー探偵を持つようになった。それがこの人、フレンチ警部である。原題も「Inspector French & The Starvel Tragedy」となっているから、まさにフレンチ警部の物語だ。
荒野(ムーア)の広がる田舎町、スターヴェル荘の主人は陰湿な守銭奴で唯一の肉親である姪にも冷たくあたる。しかし彼も病を得て、今は(これも狡猾そうな)召使夫婦の世話を受けている。姪が高校を卒業し寄宿舎から帰って2年、彼女が初めて宿泊を伴う旅行にでている間に館は焼け落ち、主人も召使夫婦も黒こげ死体になってしまった。
「アリバイ崩し」というミステリーのジャンルはクロフツの「樽」に始まったものの、発達したのはユーラシア大陸の反対側の島日本でだった。先日紹介した松本清張「点と線」や森村誠一「新幹線殺人事件」など名作が生まれ「時刻表もの」というジャンルを形成した。ただトリックには限りがあると思われ、この2人の作家もこの手の作品を量産したわけではない。
ギャビン・ライアルはマクシム少佐シリーズを書く前に、単発ものを7作書いた。本書もそのうちの1冊、1966年の発表である。元戦闘機パイロットであるキース・カーは、カリブ海で細々と運送業を営んでいる。朝鮮戦争では3機の敵機を撃墜したベテランだが、平和な時代に起用に生きる能力は少ない。愛機は、中古のダブ。