新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「影のCIA」が語る21世紀の歴史

作者のジョージ・フリードマンは、インテリジェンス機関「ストラトフォー」の創始者でありチェアマン。同社は「影のCIA」とあだ名され、政治・経済・安全保障に関する独自の情報を各国政府や大手企業に提供ていると伝えられる。「Comming WAR with Japan」な…

「String Bag」の戦果

マレー沖海戦で、海軍航空隊の「空飛ぶ駆逐艦」である陸上攻撃機が、イギリスの新鋭戦艦・巡洋戦艦を仕留めた話を以前ご紹介した。この時、英軍側は雷撃機の速度を見誤って迎撃に失敗したという。つまり、想定の倍くらいの速度で襲い掛かってくる敵機への対…

新幹線を狙ったテロ

中学生で翻訳ミステリーにはまり込み、高校生になってミステリー漁りに拍車がかかった僕は、日本のミステリーも読むようになった。かなり初期に読んで感動したのが、森村誠一「新幹線殺人事件」だったことは、昨日紹介した。 しばらくして、同じように新幹線…

宇宙人殺人事件

「黒後家蜘蛛の会」という短編ミステリーシリーズを以前紹介したが、作者のアイザック・アシモフを定義すると、「探偵小説好きの科学者がSF作家をしている」ということになろうか。彼は1920年にスモレンスク周辺の街で、ユダヤ教徒の家に生まれた。3歳の時…

最初に感動した日本ミステリー

1964年に東京オリンピックがあり、多くのインフラが整備された。その目玉だったのが「新幹線」。夢の超特急と言われ、従来8時間かかっていた東京・大阪間を3時間あまりで結ぶことができた。ただ早いだけではなく、極めて正確に運行されることも誇りだった…

原潜「チャレンジャー」バルト海へ

ジョー・バフの2作目。再びセラミック外装の原子力潜水艦「チャレンジャー」と元SEALSのフラー艦長代理の登場である。作者はMITで数学の修士過程を終え、マンハッタン計画などで有名なアルゴンヌ研究所に勤めた経験もある。そこで得た核関連のノウハウを使…

竹島奪還作戦

このところの文政権を見ていると、ほとんど北朝鮮の属国ではないかと思えることもある。あるメディアは、文大統領を正恩クンのスポークスマンさと揶揄したし、あのトランプ先生までその言動に苦言を呈している。慰安婦・徴用工・旭日旗など、日本政府や国民…

あっしには関わりのねえこって

日本のミステリーには独特のジャンルがあって、徳川時代に「目明し」という捜査官が犯罪を追いかける「捕物帖」というのがそれ。人形佐七などは、白皙の貴公子然としていて「人形のよう」だからその名がついている。神津恭介ではないが、イケメンは名探偵の…

戦術核魚雷の応酬

実験でならともかく、核兵器が実戦で使用されたのは人類史上2回しかない。それも70年も昔のことで、その後核兵器の改良はどのくらい進んでいるのだろうかと思う。核兵器の応酬がどうなるのか、専門家でない僕たちには想像が難しい。映画「博士の異常な愛情…

第三次欧州世界大戦の実相

「レッドオクトーバーを追え」でデビューしたトム・クランシーは、第二作に第三次欧州大戦ともいうべきNATO軍とソ連軍の全面戦争をテーマに選んだ。デビュー作同様、有名なゲーマーであるラリー・ボンドを協作者にしている。デビュー作は北大西洋での潜水艦…

レッドソックスのエースに何が

レイモンド・チャンドラーの描くアメリカは、1940年代のロスアンゼルス。事件を追うフィリップ・マーロウの周りには軍に入隊するなど、第二次大戦の色が濃い。エド・マクベインの87分署シリーズは、架空都市アイソラの1950年代から始まる。刑事の何人かは…

もうひとつのプロの世界

20世紀末、アングロサクソン流の金融が世界を席捲していたころの本「アングロサクソンになれる人が成功する」を前回紹介した。今回は、もうひとつのプロの世界、プロ野球である。よく「契約金x億円」「年俸x億円越え」などと景気のいい数値が、スポーツ新…

プロを目指す人たちへの遺言

人生を変える契機になったことというのは、そう多くない。ミステリーとの出会いも、シミュレーションゲームとの出会いもそのひとつだったが、ここで紹介する本「アングロサクソンになれる人が成功する」もそうだった。金融アナリストである著者は、TVのニュ…

才人の手裏剣60連発

アイザック・アシモフは才人である。SF作家として知られており、「私はロボット」「銀河帝国の興亡(全3巻)」などの著作がある。そろそろ現実味を帯びてきたロボットと人間の共生時代を予測し、ロボット三原則を顕わしもした。そんなアシモフは、ミステ…

4,000年の重み

中国は「権謀術数」の国だという。まあ、日本を含めてどの国でもその要素や歴史はある。俗に「中国4000年」というが、古くから文明が栄え記録が残されていることで、権謀術数の歴史がいっぱい積み重なっている。陳舜臣には「中国の歴史」全7巻と「小説十八…

私立探偵の矜持

「男はタフなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」とは、ロサンゼルスの私立探偵フィリップ・マーロウの有名なセリフである。レイモンド・チャンドラーは、マーロウものの長編を7つしか残さなかった。フレミングの007ものの12作より…

なぜ「太平記」なのか?

池波正太郎著「真田太平記」を読了した。週刊誌に9年間連載された大作である。最後の12巻は「霧の峰」で、大阪夏の陣の後、徳川方大名として生き残った真田信之が松代に転封されるまでを描いている。昔NHK大河ドラマ化された時も、夏の陣で真田幸村こと信繁…

撃ちてし止まむ

第二次世界大戦における日系アメリカ人の苦難については、山崎豊子「二つの祖国」などで紹介されている。この書はNHKの大河ドラマにもなって、日系二世部隊の存在や活躍は広く知られるに至った。本書は、2003年にノンフィクション作家である渡辺正清が、日系…

火付盗賊改方

池波正太郎の3大シリーズものと言えば、「仕掛人藤枝梅安」「剣客商売」と、この「鬼平犯科帳」であろう。1967年「オール讀物」に第一作が登場してから合計132編が発表されている。火付盗賊改方長谷川平蔵とその家族や配下、密偵たちを描いた作品で、時代劇…

タイタニックと沈んだ未発表作品

20世紀初頭のアメリカが生んだ名探偵と言えば、僕はこの人ではないかと思う。哲学博士、法学博士、王立学会員、医学博士等々の肩書を持つオーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン教授。年齢不詳だが年より老けて見え、小柄でやせ型、斜視気味の風采の…

名無しの非情な探偵

1929年というのは、第一次大戦後世界経済の中心になったアメリカから「大恐慌」が発生して、暗雲が漂ってきた年である。それ以降、ドイツではナチス党が台頭、中国東北部には日本の傀儡国家「満州国」が生まれるなど、世界は次の大戦に向かって転げ落ちてゆ…

最初に読んだ倒叙ミステリ

ミステリの一番の売りは "Who done it?" だと思う。不可能犯罪を暴く "How done it?" などもあるが、やはり「犯人はお前だ」というのが王道だ。巨匠エラリー・クイーンはデビュー2作目 "French Powder Mystery" で最後の1行で犯人の名前を言うというアクロ…

ムルマンスク・コンボイ

第二次欧州大戦にはいくつかの曲がり角があった。ひとつには、英国上空の戦いでドイツ空軍がイギリス侵攻の糸口をつかめなかったことである。もうひとつの曲がり角は、ドイツ軍がソ連に侵攻した後の、モスクワ・レニングラード・スターリングラードの戦いだ…

ロサンゼルスの黒人街

ウォルター・モズリイはカリフォルニア生まれの作家、ユダヤ人の母と黒人の父を持ち少年期は貧しい暮らしだったようだ。40歳を前に発表した本書がいくつかの賞を受賞し、プロ作家となった。以後成人向けやサイエンスフィクションなど40作ほどを書いたが、一…

一人四役

わたしが語るのは殺人事件の物語です。 わたしはその事件の探偵です。 そして証人です。 また被害者です。 さらに犯人です。 フランスミステリーの鬼才、セバスチャン・ジャプリゾ「シンデレラの罠」のキャッチコピーである。訳者は、作者は一人四役を意図し…

完全犯罪へのヒント

ミステリーを読み始めた中学生のころ、謎解きが当たったりすると有頂天になり、自分は正義の味方になったような気がしたものである。次々と殺人事件の書籍を読み漁り、人殺しなんて悪いことをする奴を追求するのに没頭していた。名探偵は言うに及ばず警官・…

Epoc Games

国産のシミュレーション・ゲーム・メーカーとして、エポック社もメジャーを目指した企業だった。「バルジ大作戦」や「D-Day」、「独ソ電撃戦」、「装甲擲弾兵」など第二次欧州大戦を舞台にした定番もののほか、米国ではあまり知られていない「日露戦争」のよ…

Hobby Japan Games

かつて隆盛を誇ったアメリカのゲームメーカー「アバロン・ヒル」のゲームを4つばかり紹介した。一時期、各社の物を合計80は持っていたように思う。(数えたことがない) ゲームはもちろん関連誌の評を参考にして買うのだが、本当のところは買って、フタを開…

コタツの上の戦争

中学でミステリーにはまり、高校でカメラを始め、大学も終わりごろになって3番目のものがやってきた。それはシミュレーション・ウォー・ゲーム。今ではシミュレーション・ゲームというと、PCもしくはゲーム機のそれを思い浮かべる人がほとんどだろうが、…