2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧
トランプ大統領は、就任前から中央情報局(CIA)を非難してきた。例えば、彼がロシアに弱みを握られているとの情報を流したのはCIAだというのである。便益よりもリスクが大きい組織だという認識から、CIAを縮小するとも言ってきた。メディアは、大統領と情報機…
1988年ロンドンのイーストエンドの一角で、娼婦が次々に殺される事件が発生した。顔を切り刻んだり内臓を取り出して並べたり、凄惨な連続殺人事件である。人々はこの犯人を「切り裂きジャック」と呼んで恐れた。結局3カ月足らずの間に少なくとも5名の被害…
ドイツのミステリーというのは、過去に1冊しか読んだことがない。ただ最近は、創元社などが少しづつ翻訳して出版している。本屋大賞というものがあって、ある意味書店のキャンペーンのようなものだが、翻訳小説部門があるのを初めて知った。本書は、2012年…
いかに100万人の陸軍や10万人の特殊部隊を持とうとも、米韓軍も60万人規模であり、海空戦力では比較にならないほど戦力差が大きい。だから北朝鮮軍の南進にはかなりの好条件が整わなくてはならない。作者のラリー・ボンドもよく心得ていて、かの国の指導者に…
「レッドオクトーバーを追え」「レッドストーム・ライジング」の2作で、トム・クランシーの重要な協力者を務めた元海軍の分析官でゲーマーのラリー・ボンドが、自ら執筆したのが本書である。北大西洋での潜水艦追撃戦から西ヨーロッパでの大規模戦闘にスケ…
南北戦争というのは、日本人にとってはなじみの薄い事件である。英語名称は「Civil War」というが、これは内戦のことである。こういうタイトルのゲームがあって、買ってはきたのだがまともにプレイできなかった。ゲームシステムそのものが難しいというよりも…
ハーラン・コーベンは大学時代にバスケットボールやフットボールのプレーヤーで、卒業後いくつかの職業に就いたのち、本書で作家デビューを果たした。主人公マイロン・ボライターは、バスケットボール選手として大学で花形、NBLで活躍を始めるが、試合中のケ…
「ミッションMIA」で壮烈なベトナム未帰還兵奪回作戦を描いた、J・C・ポロックの次の作品がこれ。実は日本に紹介されたのは、本書の方が早い。ベトナムで戦った特殊部隊員が、数年の時を経て昔の戦友と一緒に戦うというシチュエーションは同じだが、今…
エド・マクベインの87分署シリーズでは、何人かの刑事たちが主人公である。メインキャラクターは(殺すことができなくなったので)不死身のキャレラ二級刑事。このほか、長身・金髪の二枚目クリング三級刑事、薄い頭髪を気にするマイヤー二級刑事、海軍上…
アクション・バイオレンス小説でシリーズ化を図ろうとすると、無敵の主人公は設定できても敵役に苦しむことになる。次々に「より強い相手」が必要になるからだ。トム・クランシーの主人公ジャック・ライアンのように大統領にまでなってしまうと、「米中開戦…
先日爛熟期にあるハリウッドでプリンス・マルコが活躍(例によって女性相手が主体だが)する、ジェラール・ド・ヴィリエの「インディアン狩り」を紹介した。それから12年、今度はロバート・B・パーカーのレギュラー探偵スペンサーがやってきた。ほとんどホー…
007カジノロワイヤルを読んで、.25口径自動拳銃のグリップを骨組みだけにしてテープを巻いたものなら正装していても携行して目立たないという記述があったことは何日か前に書いた。恐らくは、ベビー・ブローニングのようなものだったろう。 ◆FNブローニ…
パトリシア・マガーという作家は、あまり日本では知られていないかもしれないが、ユニークなミステリーを残した。1946年の「被害者を探せ」に始まり、初期の5作はおおよそ1年毎に発表されたが、各々独自の趣向を凝らしている。名作と言われるのは第二作「…
神戸生まれの中国人作家陳舜臣は「枯草の根」(1961年)で江戸川乱歩賞をとり、以降ミステリーに歴史ものを交えながら、レベルの高い作品群を残した。僕は「小説十八史略」や「中国の歴史」を愛読していて、大変勉強させてもらったとの思いがある。本書は神…
以前エラリー・クイーンの「ハートの4」、レイモンド・チャンドラーの「かわいい女」を紹介している。前者は、第二次世界大戦がまだ始まっていない1938年の発表。映画が興隆していたころで、ミステリー作家も原作者として動員されていた。ハリウッドもまだ…
第二次世界大戦の後世界の頂点にたったアメリカ合衆国が、つまづいた最大の事件がベトナム戦争である。もともとフランスの植民地であったベトナムは、大戦後独立気運が高まり共産国に支援されたホー・チ・ミンが勢力を伸ばしていた。旧宗主国のフランスを追…
海が大好きで海洋冒険譚を膨大に公表しているクライブ・カッスラーの、2013年の作品が本書である。これまで国立海中海洋機関(NUMA)の冒険家ダーク。ピットを主人公にしたものがたくさん出版されたが、日本ではその多くが絶版になっているらしい。 ダーク・…
アンディ・マクナブも、SAS出身の覆面作家である。湾岸戦争で「ブラボー・ツー・ゼロ」という部隊に所属し、イラク軍のスカッドミサイル発射拠点を探るパトロールを指揮した。任務の途中で敵に発見され8名の隊員のうち3名が戦死、マクナブを含む4名が捕虜…
シカゴ在住の女流ミステリー作家、サラ・パレツキーの最初の作品が本書。同じくシカゴで活躍する女性私立探偵V・I・ウォーショースキーを主人公にした長編が、いままで18作発表されている。ウォーショースキーは名前の通りポーランド系、警官だった父親か…
S・S・ヴァン・ダインのファイロ・ヴァンスものが好評を博す中、そのペダンティックな言動に辟易するとの意見も出てきた。そこで登場したのが、エラリー・クイーンという青年(たち)作家。パズル小説としてのフェアプレイはもちろんのこと、本格ミステリー…
横山信義を海の架空戦記作家とするなら、こちらは空の架空戦記作家と呼ぶべきかもしれない。第二次世界大戦をベースに、少しアイデアを盛り込んでIFの世界を描くという共通点がある。いずれも、20年ほど前に気楽に読んだものである。じゃあ陸の架空戦記作…
詩人・批評家・編集者でもあるポー(Edger Allan Poe)は、1809年ボストンに生まれている。まだナポレオン1世が大陸に覇を唱えているころであり、アメリカ合衆国も独立から半世紀も経っていない。1830年代からいろいろなジャンルの文学を扱い自らも著わして…
幕末の中でもほんの一時期、京都で剣を振るい耳目を集めた剣士集団「新選組」。最大でも200名を超えたこともなく、募集・内紛・脱走を繰り返したある意味無頼な浪人の集まりであるのに、日本人の認知度は高い。これは子母澤寛の名著「新選組始末記」に拠ると…