新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

上海人の金銭感覚、2017

1週間前に別ブログでだが、上海の2年の勤務を終えて帰国した人に聞いた話を紹介した。スマホがあれば財布の要らない便利都市、みんな豊かで政府を信頼しているとのことだった。 中国都市部の今の状況 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com) 日本での「…

Green政策の処方箋

菅内閣の基本方針は「Green & Digital」だった。現下の国際情勢における方針として異論はないのだが、どうもGreenの方は僕は苦手だ。とはいえ食わず嫌いは良くないので、少々古い(2008年発表)書だが読んでみた。発表の前には「愛・地球博」や「洞爺湖サミ…

柴田錬三郎巷談12編

昨日司馬遼太郎「新選組血風録」を紹介したのも、このところ「巣ごもり」で古い映画を見ることが増えたから。BSの「木曜時代劇」など、懐かしさに溢れる作品を放映してくれる。先月は「仕掛人藤枝梅安」「柳生武芸帖」を見て、時代劇の良さを再認識している…

組織の中で生きる術を学ぶ

中学生の時、国語の先生に「Xの悲劇」を紹介してもらってから欧米ミステリーにハマった僕だが、それ以前はと言うと「時代小説」をよく読んでいた。そのなかでも最初(の頃)に読んだのが本書。大家司馬遼太郎が「小説中央公論」に1962年に連載した、15編の…

倒叙のような倒叙でないような

リチャード・ハルという作家は、長編ミステリー15作を発表しながら、邦訳されたのは3作だけ。 1935年 伯母殺人事件 1935年 他言は無用(本書) 1938年 善意の殺人 「伯母殺人事件」はデビュー作ながら、大きなセンセーションを巻き起こした作品で、いまでも…

三度映画化されたSFホラー

リチャード・マシスンという作家の作品を、紹介するのは初めて。1953年から半世紀以上に渡って脚本・小説を書き続けた作家で、僕は短編「激突」をTVで見て出会った。 ◆激突(1971年) ・監督 スティーヴン・スピルバーグ ・主演 デニス・ウィーバー(マクロ…

女王初期の短編集

女王アガサ・クリスティーは、1920年代にはまだ手法が完成しておらず、ポワロ&ヘイスティングズの本格ミステリー、トミー&タペンスの明るいスパイものなどを取り混ぜて長編小説を発表していた。正直後年の作品集に比べると、単発ものの「アクロイド殺害事…

オカルトと科学の融合

本書は、以前紹介した東野圭吾の「ガリレオシリーズ」の第二短篇集。1999~2000年の間に<オール読物>に掲載された5編が収められている。TVシリーズのように女性刑事は登場せず、大学時代の同級生草薙刑事からもちこまれる「怪事件」を湯川助教授が解決す…

21世紀型経済の処方箋

先日水野和夫氏の著書「資本主義の終焉と歴史の危機」を読んで、今世界で起きていることの多くが説明できる説に驚いた。要は地球上からフロンティアが消え、これを前提としていた資本主義は維持できないというものだ。 超マクロ経済学による説明 - 新城彰の…

ブルームズベリーの古いアパート

以前「名のみ知られた名作」をいくつか紹介した。書評に「名作」とありながら、絶版になっていて普通の書店では手に入らないミステリーたちである。例えば、ヘレン・マクロイ「幽霊の2/3」とロジャー・スカーレット「エンジェル家の殺人」を手に入れた嬉…

ハーカーズ島の惨劇

本書(1994年発表)は、マーガレット・マロン作「デボラ・ノットもの」の第三作。ノースカロライナの若い女性判事デボラの活躍を描いたもので、前2作は彼女のベースである内陸のコルトン群(架空)での事件だったが、今回は実在の島ハーカーズ島でデボラが…

4つの分断がむしばむ民主主義

米国バイデン政権の支持率が下落傾向、某誌などは「支持率暴落」とまで書いている。きっかけはアフガニスタン撤兵のゴタゴタなのだが、僕はいずれやらねばならぬことだから政権の決断に拍手を送っている。バイデン政権を悩ませている問題はアフガニスタンや…

メイスン先生の法廷術講座

本書も、E・S・ガードナーの「ペリイ・メイスンシリーズ」の一冊。このシリーズは法廷シーンが売り物で僕もそれを期待して読むのだが、本書は冒頭短い法廷シーン、最後の100ページの法廷シーンとそれが2度も出てくる「お買い得作品」である。 所要である判事…

レディ・ヘレンの.25口径

本書(1999年発表)も、ジャック・ヒギンズの「ショーン・ディロンもの」。英国首相の「私的軍隊」と言われる対テロ専門組織の3人、ファーガスン准将、バーンスタイン警視、元IRAのディロンが活躍するシリーズだ。英米の同盟関係もあって、ホワイトハウスの…

ナチスドイツのマイナー兵器(後編)

◆タオホパンツアーⅢ号/Ⅳ号 通常のⅢ号/Ⅳ号戦車を水密化し、約15mの深さまで潜れるようにしたもの。英国上陸「あしか作戦」のために約200両が改造された。簡単なシュノーケルも付いていた。しかし「あしか作戦」は決行されず、1941年に東部戦線に投入されソ…

ナチスドイツのマイナー兵器(前編)

別ブログでだが、アバロンヒル社の「Advanced Squad Leader」というアナログゲームシステムを使って、第二次世界大戦当時の兵器や戦場の模様を紹介している。 https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/07/13/060000 このゲームは、日英米ソ独伊はもと…

9月14日PM10:23の銃声

本書は巨匠エラリー・クイーンの後期の作品、1965年発表で以前紹介した「第八の日」の次に位置する。作者たちはこのころのエラリーをいろいろなシチュエーションに置いて、ある意味試練を与えている。前作ではネバダ砂漠に迷い込んだし、本書ではライツヴィ…

この国をどうするのか!

本書は政治ジャーナリストの権化、田原総一朗氏が2019年に発表した(ある種の)回顧録。マスコミ渡世60年の筆者が、政治家・経営者・思想家・科学者などにインタビューした中で、インパクトの強かったことを28編収めたもの。前半の政治家編に、正直目からう…

ポピュリズム政治は問題だが

本書は先年亡くなった中曽根元総理の、非常に短い回顧録である。小泉内閣時代の2003年に55年以上続けた衆議院議員を引退、その翌年に本書が発表されている。「引導を渡した」小泉総理への恨み言も書かれているが、85歳まで政治の一線におられたのだから引き…

インド王家の宝石

本書はコナン・ドイル著、シャーロック・ホームズものの長編4作のうちの第二作。第一長編「緋色の研究」も、200ページのうち事件と謎解きは半分で終わり、あとは事件の背景となったある種の冒険譚が語られていた。その傾向は本書にもあり、200ページ中、最…

知の巨人が示す世界の潮流

2018年発表の本書は、ジャーナリスト大野和基氏が世界の知の巨人8名にインタビューしてまとめ上げた、21世紀の世界の潮流。8名とは世界的に有名な、人類生態学者・軍事史学者・人材組織論の権威・分析哲学者・経済学者・元米国国防長官・女性地位向上の活…

トリックの女王・・・の娘

TVの2時間ドラマの王様格の人(原作者)はたくさんいるが、女王と言えば恐らくこの人山村美紗だろう。以前名探偵キャサリンものをいくつか紹介しているが、金髪碧眼で巧みに日本語を操る主演女優を探すのは難しく、名探偵「希麻倫子」となってかたせ梨乃主…

日本人の格差意識2010

巷間「小泉・竹中改革」が日本の格差を拡大したと言われるが、竹中教授は「小泉内閣当時にジニ係数が下がり、それ以外の時代にはずっと上がっている」と反論している。本書は竹中教授が政府を離れ、民主党政権になっていた2010年に発表されたもの。当時の日…

平壌から見る世界情勢2018

本書は2018年に発表された、ジャーナリスト柏原竜一氏の国際情勢論。「北朝鮮発第三次世界大戦」というタイトルを見てかってきたのだが、内容は「世界大戦には至らないよね」というものだ。これまで他の書や情報源から聞いている話が3/4ほどを占めるし、特に…

カゴ抜けをした死者

本書(1998年発表)は、津村秀介のご存じ「伸介&美保もの」の一編。「長崎異人館の死線」同様、美保が高校時代の同級生真里と節子と共に「女子大生の好奇心旅行」に出かけて事件に巻き込まれる。今回の舞台は大阪発札幌行きの豪華寝台特急「トワイライトエ…

江沢民政権のスキャンダル

これまで何冊も紹介しているジェラール・ド・ヴィリエの「プリンス・マルコもの」。1965年から年間4冊ペースで発表され、2008年まで書き継がれた。総計174作品。日本には1980年までの60作品は、創元社や立風書房が翻訳を出していた。その後日本での新作発表が…

男女7人殺人物語

本書は「本格の鬼」鮎川哲也が、1950年代に発表したもの。「年代」という言葉を使ったのは、本書が一度は違うペンネームとタイトルで連載されたものなのに、その後鮎川哲也名義で現在のタイトルで再び別の雑誌に連載され、後に単行本化されたからだ。 複雑な…

教師探偵キャロラス・ディーン登場

英国にはまだまだ隠れたミステリー作家や探偵がいるものだと、本書(1955年発表)を読んで痛感した。作者のレオ・ブルースは、英国では名の知られた作家で、イングランドの地方都市を舞台にしたビーフ巡査部長シリーズを8冊、本書がデビュー作のキャロラス…

原告側の鑑定人と証人

本書(1980年発表)は、作者のバリー・リードのデビュー作。作者自身ボストンの弁護士で、1978年に医療過誤事件で彼の弁護事務所は「580万ドルの賠償を支払え」との評決を勝ち取っている。本書はその事件など作者が体験した事件や法廷闘争をベースに構築され…

親父が産まれた年の東京市

親父は1927年(昭和2年)の今日産まれた。その頃僕が通っているオフィス(丸の内・青山)あたりはどうなっていたのだろうか?良く通う霞ヶ関や大手町には何があったのだろうか?そんな思いで、いつの事だったか覚えていないが買ったのがこの「古地図」であ…