新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

半魚人連続殺人事件

2009年発表の本書は、以前に「カルトの狂気」を紹介した、CBSの人気TVシリーズ「CSI:マイアミ」の1編。前作同様、SF&サスペンス作家のドン・コルテスに手になるもの。マイアミ・デイド郡警察の鑑識部門、CSIのリーダーは爆発物が専門の鑑識官ホレイショ・…

困った父親たち

このDVDは、ご存じ「ネイビー犯罪捜査班:NCIS」のシーズン10。このころの作品は、海外出張を一杯したフライト上でよく見ていたものだ。10年近く前のことなのに、いくつかのシーンを覚えている。 それを今回、全編を通してみることで、個別のエピソードだけ…

それでもプーチンは闘う

2022年発表の本書は、以前「米中戦争~その時日本は」を紹介した元東部方面総監渡部悦和氏が、井上武元陸将・佐々木孝博元海将補との対談でまとめたウクライナ紛争(初期)の分析。巻末に、世界はどう変わり、日本はどうすべきかの提案もある。 侵攻開始から…

いよいよ本物?改革政党

統一地方選挙後半戦と同時に行われた衆参5選挙区の補欠選挙は、自民党の4勝1敗となった。1敗は衆院和歌山、維新の会が議席を獲得した。立憲民主党は、1議席の獲得も成らなかった。ここにきて、維新の会が野党第一党になる予感が現実のものになりつつあ…

サウジの国難に挑む「最強のガニー」

2010年発表の本書は、これまで「不屈の弾道」「運命の強敵」を紹介してきた、ジャック・コグリン&ドナルド・A・デイヴィス共著による「最強のガニー、カイル・スワンソンもの」の第三作。 狙撃手として、特殊部隊の兵士として最高の技量・勇気・体力を持つカ…

Homegrown-Terrorist、ジューバ

2009年発表の本書は「狙撃手スワンソンもの」の第二作。海兵隊屈指のスナイパーだったジャック・コグリンが、ベテラン作家ドナルド・A・デイヴィスの助けを得て書き続けるシリーズは好調だ。 昨日紹介した前作「不屈の弾道」で、シリアで人質になっていた海兵…

カイル・スワンソン一等軍曹登場

2007年発表の本書は、海兵隊屈指のスナイパーだったというジャック・コグリンが、ベテランのノンフィクション作家ドナルド・A・デイヴィスの助けを借りて書き上げたもの。イラク戦争はじめ多くの戦場を経験した作者は、除隊後自伝的ノンフィクションを書いたが…

続・アべ政治とは何だったのか

先月「自民党失敗の本質」を紹介した。第二次安倍~菅政権の官邸主導政治の功罪に迫る、8名の関係者へのインタビュー本であった。 アベ政治とは何だったのか - 新城彰の本棚 (hateblo.jp) 本書(2021年発表)はほぼ同じ時期の官邸政治について、朝日新聞デ…

大きくなればなるだけ弱くなる

2021年発表の本書は、以前「戦争にチャンスを与えよ」「中国4.0」を紹介した、CSIS上級顧問エドワード・ルトワック氏に奥山真司氏がインタビューしたまとめたもの。前2作と同様の建付けである。軍事史・戦略史に詳しいルトワック氏は、中国の習政権は追い詰…

アダム・ダルグリッシュ警部登場

本書は、以前「女には向かない職業」を紹介したP・D・ジェイムズのデビュー作。1962年発表の本書で、英国では高名な探偵であるアダム・ダルグリッシュ主任警部(後に警視)が登場する。作者の筆は田舎町の情景や事件の背景にある人間描写に定評があり、重厚な…

アンプレザントネス文学

1886年発表の本書は、ロバート・ルイス・スティーブンソンの代表作。わずか120ページ足らずの中編だが、怪奇小説の古典としてよく知られているものだ。ただ僕自身もそうだが題名「ジーキル博士とハイド氏」は知っていても、ちゃんと読んだ人は多くないと思う…

政治団体「オリーブの木」の主張

2020年発表の本書は、YouTuberで政治団体「オリーブの木」代表の黒川敦彦氏の主張をまとめたもの。この団体の指向は、反グローバリズム・反新自由主義だが、「れいわ新選組」などの左派とは違うようだ。モットーは「なんでもできるさ、ピープルパワーで!」…

ゴシントン・ホールのパーティ

1962年発表の本書は、女王アガサ・クリスティの「ジェーン・マープルもの」。ジェーンは1930年「牧師館の殺人」でデビューして30余年経ったが、今でもセント・メアリミード村の牧師館の隣に住んでいる。ただ村はずいぶん変わった。新しい住宅街が広がり、若…

3人がかりのアリバイ工作

津村秀介の「伸介&美保」シリーズ、最後の作品「水戸の偽証」を読めないでいるうちに、また未読の1冊が手に入った。舞台は能登半島、和倉温泉。そこに作者も何度か使っている、豪華寝台特急「トワイライト・エクスプレス」が絡んでくる。新幹線の走る太平…

12の食材、12のレシピ&ワイン

昨日「イギリス人のグルメ探偵」という、考えにくい設定のミステリーを紹介した。今日は、本当に美味いものを追求するフランスでの話を読んでみたい。とはいえ著者は日本人のお二人、工藤瞳さんと鵜野幸恵さんはパリ在住の食通・ワイン通である。 前半は、フ…

食通のイギリス人(!)探偵

作者のピーター・キングは、ロンドン大学卒業後、フランス・イタリア・ブラジルなどで様々な職業に就いたとある。舞台脚本・旅行記・グルメガイドなど多彩な著書があり、1994年発表の本書がミステリーとしてのデビュー作。自ら一流シェフに負けない料理の腕…

21世紀の英知、21人の独白

2021年発表の本書は、読売新聞編集委員鶴原徹也氏が、2015年から2020年にかけて、世界の英知と言われる人物21人にインタビューしたもの。形式として、識者の独白集になっていて、編者は各独白の人物紹介と簡単なコメントを付けているだけ。 分量も統一されて…

ホワイトハウスの殺人狂<我々>

ちょっと変わった作家ビル・プロンジーニは、「名無しの探偵」シリーズが有名だが、これも単純なハードボイルドで割り切れない「奇妙な味」を持った連作である。作者はほかに何人かの作家と合作をしていて、その中でも多いのが本書(1977年発表)の共著者バ…

外国人記者の25の「なぜ?」

2022年発表の本書は、何度か政治・経済書を紹介しているWebメディア<クーリエ・ジャポン>の記事を集めたもの。主に2021年に公開された記事が取り上げられている。今回のテーマは「外国人記者の日本についての疑問」である。例えば、 ・ハイテク国なのにFAX…

無意味な競争・・・なのでしょうか?

2022年発表の本書は、れいわ新選組の大石あきこ衆議院議員の、日本維新の会への挑戦状(告発状?)。NHK「日曜討論」などでも厳しい口調で政権与党や維新を責め立てる著者だが、その因縁は大阪府職員時代からのものらしい。 30歳の時、橋下知事が若手職員と…

レアアースという資産(後編)

李将軍と黄社長の陰謀は、SGIP社の協力やブラジル大富豪の資金でうまくいくかに見えたが、ICBMの重要部品や精錬装置のコア部分の密輸が、洋上で巡回している米海軍に阻まれてしまう。北朝鮮がかくも高価な部品を手に入れられることを知ったライアン政権は、…

レアアースという資産(前編)

今年初め、トム・クランシーの遺作「米露開戦」を紹介した。最後の共著者マーク・グリーニーによって、このシリーズは書き継がれていくことになる。本書(4冊組)はグリーニー単独の手になるもので、二期目半ばのライアン大統領は、北朝鮮の陰謀と対峙する…

不動のビジネス探偵登場

以前「腰抜け連盟」を紹介したレックス・スタウトのレギュラー探偵ネロ・ウルフと助手のアーチー・グッドウィンが初登場するのが、1934年発表の本書。ヴァン・ダインに始まる米国の本格黄金期の後半に登場したこのコンビだが、本格派が行き詰る中、本国では…

「言論TV」の内容を集大成して

先日「正論大賞授賞式」でお見かけしたジャーナリスト櫻井よしこ氏は、10年あまりインターネット動画サイト「言論TV」のキャスターも務めている。本書は2021~22年にかけて、高市議員を招いて対談した内容を書籍化したもの(出版は2022年)。 高市議員は安倍…

東風41号の機密情報

2014年発表の本書は、カナダ生まれのジャーナリスト、アダム・ブルックスのデビュー作。東アジアを中心に30ヵ国を巡った人で、本書は北京駐在時の自らの経験から執筆したもの。 大柄で体力も知力もある技術者リー・ファッション(通称ピーナッツ)は、1989年…

人生100年時代への提言

2019年発表の本書は、経済学者野口悠紀雄教授の人生100年時代への提言。一時期「老後2,000万円問題」が大きく取り上げられていたが、日本の年金制度に問題が多いのは確かだ。筆者は「今のままでは年金の破綻は必至」という。だからといって、資産運用に頼る…

アリバイに護られた予告殺人者

1920年代は本格ミステリーの黄金期、巨匠エラリー・クイーンもデビューした1929年に、アリバイ崩しものの教科書のような本書も発表されている。このジャンルは1920年のクロフツ「樽」以下の先例があるが、作者クリストファー・ブッシュはデビュー作の本書を…

本当の「霞ヶ関改革」とは?

昨日紹介した「官邸は今日も間違える」が面白かったので、著者千正康裕氏のデビュー作(!)を探してみた。著者が2019年に厚労省を退官して、翌年に出版したものである。法律改正の担当だったり、関連して国会質問の対応などしていると、帯にあるように「7…

市民から離れた政策決定過程

2021年末発表の本書は、元官僚千正康裕氏の霞ヶ関&永田町改革案。著者は2001年に入省して18年間厚労省に在籍し、現在は独立してコンサル会社を経営する一方、政府機関の有識者会合や民間の政策活動にも貢献している。官僚主導から政治(官邸)主導へと政策…

SFの大家が描くミステリー

20世紀の日本のSF作家と言えば、小松左京・星新一とこの人筒井康隆が挙げられると思う。以前「時をかける少女」を含むSF短篇集を紹介したのだが、作者はミステリーも好きだった。もちろん作者は多芸な人で、小説以外にも戯曲・評論・随筆・童話・絵本・漫画…