2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧
1997年発表の本書は、2ヵ月続けて紹介したドナルド・E・ウェストレイクの「ドートマンダーもの」。シリーズ第9作にあたり、時代が進んだことで450ページを越える大作になっている。「天から降ってきた泥棒」の冒頭、不運にも逮捕されてしまった運転役のオハ…
本書は「ロウフィールド館の惨劇」をはじめ、何冊かのサイコ・サスペンスを紹介してきたルース・レンデルの作品。「ロウフィールド・・・」の直前、1976年の発表である。ロンドン市西北のケンボーン・ヴェールという自治区では、ときおり女性が絞殺される事件が…
2021年発表の本書は、米国在住のジャーナリスト冷泉彰彦氏の米国警察事情。米国ミステリーは沢山読んでいる僕だから、米国警察組織についておおむねのことは知っているが、改めて確認しようと買って来たもの。よく映画等に出てくるFBIなどは連邦警察で、その…
2005年8月末、米国南部をカテゴリ3級の大型台風<カトリーヌ>が襲った。低湿地帯の都市ニューオリンズでは市街地の8割が浸水し、多くの犠牲者が出た。2011年発表の本書は、書店員や古書販売などを経験して作家に転じたサラ・グランの作品。本書でデビュ…
西暦663年の今日、27,000人の大軍で百済救援に向かった日本軍は、白村江で唐の水軍に敗れた。「大化の改新」で国力を増し、阿部比羅夫の蝦夷征伐で鍛えた水上戦力をもって、本格的に半島に侵攻しようとした大和朝廷は一敗地にまみれることになる。 1996年発…
2022年発表の本書は、放射線医学が専門で医療経営にも詳しい奥真也医師の「日本の医療制度診断診断」。題名に「医療貧国」とあるが、本書のデータを見る限りちょっと誇大広告。例えばOECD各国(カッコ内が平均)との比較で、 ・MRIは人口100万人あたり55台(…
今年になってようやく見つけた「泥棒バーニーもの」を、2冊紹介しているローレンス・ブロック。シリーズ長編も面白いが、特徴がより顕著なのが数ある短編。ハヤカワが独自に短篇集を企画していて、第一集「おかしなことを聞くね」は以前紹介した。今回、第…
1987年発表の本書は、従軍経験のあるフリージャーナリスト、アンドルー・カプランのスパイスリラー。作者はテルアビブ大学在学中に<六日間戦争>に参加、米国に帰国後も陸軍に入隊している。本書ともう1篇、片目のジャックことジャック・ソーヤーものを書…
1937年発表の本書は、不可能犯罪の巨匠ジョン・ディクスン・カーの<アンリ・バンコランもの>。作者の初期作品4作に登場するパリの予審判事で、メフィストフェレスのような風貌をして怪奇な事件を解決する名探偵である。 作者は30歳が近づくと、この(ある…
1956年発表の本書は、巨匠エラリー・クイーンの異色作。エラリーは一度も登場せず、主人公はリチャード(ディック)・クイーンと看護師ジェシイ・シャーウッド。2人は以前紹介した「真鍮の家」で結婚しているのだが、そのなれそめが本書の事件である。 ディ…
2021年発表の本書は、北京特派員経験もある朝日新聞記者福田直之氏の、中国デジタル社会レポート。「20世紀はオイルの世紀、21世紀はデータの世紀」と言われるように「Data Driven Economy」時代になっているが、データの利用にはいくつかの制約がある。特に…
本書は、以前「ダブル・ディーラー」を紹介したマックス・アラン・コリンズのCSI(ラスベガス版)もの邦訳第二弾。CBSの人気ドラマで、いくつものスピンアウトがあるが、このラスベガス版が本家。ラスベガス市警科学捜査班主任で、昆虫学者のギル・グリッソ…
しばらく前に紹介した高木彬光「七福神殺人事件」では、作者も主人公神津恭介教授も年齢を重ねていた。作者の体調不良もあり、かの作品(1987年)で恭介のシリーズは終了となるはずだった。しかしTVドラマ「神津恭介の殺人推理」の放映(恭介役は近藤正臣)…
昨日紹介した「警視庁最重要案件指定~靖国爆破を阻止せよ」で、日韓など外交関係の「古傷」を考えさせられたので、本棚から探してきたのが2008年発表の本書。著者の東郷和彦氏は元外交官。駐オランダ大使を最後に辞任(*1)したが、その後も米韓台各国の教…
2015年発表の本書は、2013年の「一千兆円の身代金」で<このミス大賞>を受賞した八木圭一の社会派ミステリー。慰安婦・徴用工・竹島問題などで日韓関係に亀裂が走り、SNS上で市民同士のののしり合いが続いている。国内でも韓国に強硬に対処するよう求める右…
このシリーズ6冊は「大鑑巨砲作家」横山信義の太平洋戦記。昨年紹介した「蒼洋の城塞」同様、少しずつBook-offの100円コーナで6冊を揃えた。このシリーズのアイデアは2つ。まず主人公たる戦闘艦が存在する。「巡洋戦艦浅間シリーズ」同様の設定で、今回は…
昨日の「秘録陸軍中野学校」の続編。同じく畠山清行の著作全6巻の内3~6巻124エピソードから39を保坂正康が選んで編集したもの。戦況の悪化に伴い、卒業生に求められるミッションも変わってきた。敵地に潜入して長期にゲリラ活動をする訓練も加わり、卒業…
本書は戦前・戦中の実録ものを多く遺した、畠山清行の「秘録陸軍中野学校*1」のうち1~2巻(1971年発表、エピソード60)から、ノンフィクション作家保坂正康が28エピソードを選んで編纂し文庫化したもの。 謀略戦としては、日露戦争時の明石大佐のロシア国…
2023年発表の本書は、これまで「秩父宮」「陸軍良識派の研究」などを紹介してきたノンフィクション作家保阪正康氏の、近代戦争史観。半藤一利氏が亡くなって、筆者は残された数少ない歴史探偵のひとりである。プーチンのウクライナ侵攻によって、WWⅢが近いと…
2001年発表の本書は、トム・クランシーとマーティン・グリーンバーグのコンビが送る私設特殊部隊<剣>シリーズの第四作。クランシー作品としては比較的短いのがこのシリーズの特徴だが、全8作のうち本作だけが上下巻になっている。巨大防衛産業アップリン…
外国ミステリーというと昔は多くは英米、まれにフランスがあるくらいだった。その後北欧やイタリアのものも、徐々に翻訳されるようになってきた。しかしありそうでないのがドイツ語圏のミステリー。以前フォン・シーラッハの「犯罪」を紹介しているが、これ…
1968年発表の本書は、イタリアのミステリーとして珍しいハードボイルド風の警察小説。ローマ警察外人課のベッリ警部は、辣腕刑事であるが(イタリア警察では普通だが)裏稼業を持っている。個人が望まない人物を国外退去させるなど、賄賂を貰って便宜を図る…
2019年発表の本書は、同志社大学教授白戸圭一氏(国際関係学)の現代アフリカレポート。日本人が通常持っている、アフリカのイメージを一新するものだ。筆者は30年近くアフリカに係り、その変化を見てきた。帯にあるように「もう援助は要らない。投資してく…
本書は、グアテマラ生まれの作家パトリシア・M・カールスンの作品。解説によれば統計コンサルタントで素人探偵のマギー・ライアンを主人公にしたシリーズの第六作、少なくとも8作あるはずなのだが邦訳されたのは本書ともう1冊だけ。残念ながら「好奇心あふれ…
本書は、2007年に文芸春秋に発表された歴史家の対談を新書化したもの。歴史探偵半藤一利氏と文芸評論家福田和也氏が2つの対談に加わり、 ・陸軍編 黒野耐元陸将補、戸部良一防大教授、作家保坂正康氏 ・海軍編 海軍史研究家戸高一成氏、秦郁彦日大講師、平…
2016年発表の本書は、アジア系米国作家ピーター・トライアスの第二長編。邦訳されたのは本書が最初である。帯にあるように第二次世界大戦は枢軸側が勝利、米国は日独によって分割統治されている。そんな世界の北アメリカ大陸西海岸での、 ・日帝に抵抗する米…
英国<エコノミスト誌>が、所属の編集者たちに「2050年の世界を予測する」企画を課し、2012年に出版されたのが本書。邦訳にあたり船橋洋一氏が解説を付けている。これも長く本棚に眠っていたものだが、世界の激動を見ているうちに探して再読する気になった…
2008年、「アンドロメダ病原体」「ジュラシック・パーク」などの著作で知られるマイクル・クライトンが亡くなった。享年66歳。作家として脂ののった年代なのに、喉頭がんで世を去った。まことに残念である。死後、使っていたPCから、2つの未発表作品が見つ…
1965年発表の本書は、米国探偵作家クラブの最優秀賞に輝いたスパイ小説。本書でデビューしたアダム・ホールと地味なスパイであるクィラーは、以前「暗殺指令タンゴ」を紹介したことがある。スパイスリラーは古典である「外套と短剣」ものから、シリアスな、…
1983年発表の本書は<シカゴ・トリビューン紙>出身のボブ・ライスが描く軍事スリラー。1942年夏の米国東海岸における、ナチスドイツの軍事行動がテーマである。先年の真珠湾攻撃によって米国は第二次世界大戦に正式に参戦するのだが、それ以前から英国やソ…