2025-03-01から1ヶ月間の記事一覧
このブログを2019年に始めて丸6年、2,300ほどの書を紹介してきた。カテゴリのベスト3は、歴史・軍事史、政治・経済書、本格ミステリーとなっていていずれも350冊ほどである。4位の社会派ミステリーは180冊ほどだから、この3カテゴリがメインである。 そ…
2024年発表の本書は、「米中戦争*1」などを紹介したインテリジェンス溢れる外交評論家宮家邦彦氏の<トランプ2.0政権予測>。困ったことだが、予測は的中しつつある。要点は、 ・トランプ2.0政権は復讐に没頭する ・武器支援が滞り、ウクライナは敗北する ・…
1971年発表の本書は、EQMMの常連短編作家A・H・Z・カーが書いた長編本格ミステリー。作者の本業はジャーナリストらしいが、歴史もの・伝記もの・ビジネスものなどの著作がある一方、毎年のようにEQMMにサスペンス色の濃い作品を投稿していた。 そんな彼の本格ミ…
2008年発表の本書は、<サンデータイムズ>の記者だったマット・リンのフィクションデビュー作。作者自身は戦闘経験はないようだが、昨日紹介したクリス・ライアンらの諸作を参考に軍事スリラーのアンダーライターを経て自ら執筆したと解説にある。序文をそ…
緒戦で航空戦力のほとんどを失ったハンガリーは、チェコやポーランドに助けを求めた。両国のMigはフランスのラファールには敵わなかったが、ポーランドのF15は互角の闘いをする。それに怒った独仏連合軍は、ポーランドにも侵攻を開始する。ポーランド平原で…
1993年発表の本書は、先月「核弾頭ヴォーテックス」を紹介したラリー・ボンドの軍事スリラー巨編。上下巻で1,000ページを越える間、20世紀末の新兵器・旧兵器が東欧を中心としたヨーロッパで暴れまわる。 冷戦後の欧州大陸、全ての国が問題を抱えていた。ロ…
巨匠松本清張のデビュー作は、歴史小説だった。「西郷札」というその短編集はいずれご紹介したい。本書は3編の歴史小説を収めたもの。特に作者の強い主張は見えず、時代に翻弄されたり抗ったり運をつかみ損ねた人たちの姿を淡々と描いたものだ。 表題作「軍…
本書は集英社<KOTOBA誌>に2022年から2024年まで連載された論説を集め、加筆修正して新書としたもの。著者の山口二郎教授はリベラル派の論客として知られ、安倍政権批判を繰り返した人。「民主主義は終わるのか*1」などの著書を紹介している。 若いころから…
1981年発表の本書は、ジェームズ・P・ホーガンのガニメアン三部作(*1)最後の作品。前作までで、 ・惑星ミネルヴァに高度な人類(ルナリアン)の文明があった ・この惑星は爆発して月、冥王星、小惑星帯などになった ・ルナリアンや人類を育てたのは高度な文…
ジェラルド・カーシュは「奇譚作家」と呼ばれている。1911年にロンドン郊外で産まれたユダヤ系イギリス人。貧しい生い立ちで、職も転々とした。広範な職業を経験した中には、レスラーというものもあった。三度結婚、二度離婚。WWⅡに従軍もして、空爆で生き埋…
2020年発表の本書は、長くヤングアダルト向けのアクション小説やTV番組脚本を手掛けてきたディヴィッド・ギルマンが、本格的なスリラーに挑んだシリーズの第一作。こういう言い方がいいかは微妙だが、ハードボイルドに<軽ハードボイルド>があるように、<…
本書は、今月「朝鮮半島統一後に日本に起きること」を紹介した韓国人ブロガーシンシアリー(SincereLEE)が、文政権の5年を解説したもの。次期大統領選挙直前の2021年秋に発表されている。 筆者が韓国を離れたのは、魔女のように扱われた朴槿恵大統領弾劾の…
1982年の今日は<フォークランド紛争>が起きた日。人口わずか2,000人の英国領にアルゼンチン軍が侵攻し、サッチャー政権の強硬姿勢に敗れた3ヵ月の闘いだった。1998年発表の本書は、それから16年後のフォークランドで再び紛争が起きた設定のフィクション。…
2002年発表の本書は、元CIAで日系企業の弁護士もしていたというバリー・アイスラーのサスペンス小説。日本語を流ちょうに操り、日本滞在経験もあるという作者は、日系の殺し屋レインが主人公のシリーズを書き続けている。 舞台は東京、日英バイリンガルのレ…
このブルーレイは、派手なアクションが売り物の「Hawaii-5O」のシーズン7。どのシーズンもおおむね全編にわたる仇敵が存在するのだが、このシーズンでは目立った敵はいない。その代わり、ホームドラマ的要素が強くなった。マクギャレット少佐の母親ドリスが…
本書は、ロシアのウクライナ侵攻以降脚光を浴びている、東京大学特任助教小泉悠氏の対談集。2022年秋~2023年夏の間、3人の専門家と話し合った記事を新書版で集約したもの。3人とは、 ・防衛研究所の戦史研究者、千々和泰明主任研究官 ・法政大学法学部、…
1988年発表の本書は、NHKのTVドラマ「事件記者」(1958年~)の脚本も担当したジャーナリスト出身の作家島田一男の作品。1946年に<宝石>の新人賞を獲り、1948年からリアルなミステリーのシリーズを多数発表するようになった。1950年から山田風太郎・高木彬…
2022年発表の本書は、ノンフィクション作家平野久美子氏の「日本の死因究明制度」レポート。筆者は両親らの死にあたり「異状死」としてその対応に追われた経験から、日本で普通に死んだ人の死因の究明がどうなっているかを調査した。 病院以外で死んだり持病…
2014年発表の本書は、ジャーナリスト出身のジュリア・ダールのデビュー作。全米ミステリ大賞の新人賞をさらった話題作だという。主人公は、ブルックリンでタブロイド紙の記者になったばかりのレベッカ。偶然スクラップ置き場で見つかった女性の全裸死体に遭…
1995年発表の本書は、エド・マクベインの<87分署シリーズ>。以前紹介した「悪戯」に次ぐ作品で、今回の主役はバート・クリング三級刑事。第一作からの主要レギュラーで、金髪・スマートな二枚目青年である。しかし、女運がとても悪い。最初の恋人クレアと…
2023年発表の本書は、NHK解説委員水野倫之氏とニュースデスクキャスター山崎淑行氏の共著。長年エネルギー問題を取材してきた2人が、福島原発事故などを分析して日本のエネルギー政策についてまとめたもの。巻末にNHKの先輩である池上彰氏との鼎談もある。 …
1981年発表の本書は、エリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>。先月紹介した「修道士の頭巾」に続く第四作。シュールズベリ大修道院は、厳格な修道院長ラドルファス体制になり、1年前は内乱でできなかった聖ペトロの祭りを行う夏を迎えた。聖ペトロ…
1963年発表の本書は、「動く標的」でデビューし20冊弱の長編ハードボイルドを遺したロス・マクドナルドの<リュウ・アーチャーもの>。先輩格のハードボイルド探偵フィリップ・マーロウが「非情の世界で希望を抱く孤高の騎士」なのに対し、アーチャーは悲劇…
2004年発表の本書は、数冊紹介しているSAS出身の覆面作家クリス・ライアンの軍事スリラー。「テロ資金根絶作戦*1」の続編にあたり、前作の作戦を生き延びスペインで平和に暮らしていたマット・ブラウニングに、再び任務が与えられる。 この8月、英国南部は3…
ミステリが主体だった東京創元社の翻訳もの、1989年に「創元ノベルズ」が誕生して、軍事スリラーが出版されるようになった。米国で1986年に発表された本書は「ノベルズ」の3~4作目として翻訳されている。シミュレーションゲームに凝っていたころなので、…
本書は京都生まれの歴史作家澤田瞳子氏の、京都旅行エッセイ。<問題小説>に2005~07年に連載したコラムを、四季別に編集したもの。これまで何冊か京都の旅行書を紹介してきたが、あるものは歴史学的過ぎ、あるものは「るるぶ」に近いようなガイドブックだ…
ソ連の独裁者スターリンは、1953年3月5日に死んだ。自国民を2,000万人も殺した男というのは、おそらく史上唯一だろう。1987年発表の本書は、在英国としか情報がない冒険小説家ジェイムズ・バーウィックの初邦訳作品。 WWⅡの後、ソ連中枢部は西ヨーロッパ侵…
2018年韓国が「親北」の文政権だったころに、韓国人ブロガーであるシンシアリー(SincereLee)が発表した本書は、韓国人の根底にある民族主義を日本語で綴ったもの。最大の主張ポイントは「北朝鮮が日本に核ミサイルを撃つ可能性より、南北統一後の高麗連邦…
1959年発表の本書は、以前「人形つかい」を紹介したロバート・A・ハインラインの代表作。ヒューゴー賞受賞のSFの金字塔である。人類が「恒星間戦争」をするようになった時代、当面する敵はクモのような生命体。女王グモや頭脳グモが、凶悪な戦闘クモを指揮して…
1947年発表の本書は、A・A・フェアの「バーサ&ラム君もの」。パートナーになって本来のずうずうしさが増してきたラム君が、細かなお金に執着する探偵所長バーサの悲鳴をよそに、バンバン経費を使って(*1)事件解決にあたる。 そもそも、怪しげな依頼を受ける…