ハードボイルド
1986年発表の本書は、これまで「アリバイのA」「泥棒のB」を紹介した、スー・グラフトンの第三作。南カリフォルニアのサンタ・テレサに住む、女探偵キンジー・ミルホーン(わたし)のシリーズである。キンジーは32歳、離婚歴2回、元は警官だったが、拳銃…
1994年発表の本書は、ロマンス小説家として地歩を築いていたジャネット・イヴァノビッチが初めて書いたミステリー。英国推理作家協会から当該年の最優秀処女長編賞に輝いた作品である。舞台となったのはニュージャージー州の州都トレントン、ニュージャージ…
以前「別れの顔」などを紹介した、正統派ハードボイルド作家ロス・マクドナルド。1944年にエスピオナージ「暗いトンネル」でデビューしたが、ミステリー界に足跡を残したのは本書(1949年発表)に始まる、私立探偵リュー・アーチャーものによってである。文…
笹沢左保の「木枯し紋次郎」シリーズは、ほとんどが50ページくらいの短編。主要な登場人物は紋次郎のほかには3人くらいで、最後の5ページでそのうちの一人の「意外な正体」が紋次郎によって暴かれるパターンが多い。加えて舞台となった町か村の当時の風習…
本書(2005年発表)は、ロバート・B・パーカーの「スペンサーもの」の後期の作品。今回スペンサーは、ボストン郊外の(多分富裕層の子弟向けの)高校で起きた銃乱射事件の被告の少年を救う仕事を引き受ける。スキーマスクを被った2人の男が4丁の拳銃を撃ちま…
以前「悪党パーカー」シリーズを紹介したドナルド・E・ウェストレイク、多彩な作風で知られているがそのルーツは雑誌「マンハント」にある。ミステリー雑誌のひとつで、主にハードボイルド小説を掲載して人気を博した。ウェストレイクはハードボイルド短編で経…
本書はハーラン・コーベンのマイロン・ボライターものの第6作。元バスケットボールのプロで、現在は<MBスポーツレップス>というエージェント会社を運営しているマイロンと、その仲間たちが活躍するハードボイルドシリーズである。 解説には、その仲間たち…
ABC・・・順にタイトルを付けていった、スー・グラフトンの第二作が本書。デビュー作から3年を経た、1985年の発表である。主人公は、南カリフォルニアの架空の街サンタ・テレサに住む女私立探偵キンジー・ミルホーン、32歳。健康に気づかいジョギングなどに余…
2005年発表の本書は、ロバート・B・パーカーのスペンサーものの32作目。1973年「ゴッドウルフの行方」でデビューしたボストンのちょっとヤクザな私立探偵の活躍も、30年以上に渡っている。恋人スーザンに去られてしまったり、灰色の男(Gray Man)に撃たれて…
本書はハーラン・コーベンのマイロン・ボライターものの第五作。マイロンは小さなスポーツエージェント会社の経営者。扱うスポーツアメフト・テニス・バスケットボール・ゴルフときて、今回は再びバスケットボール。ただいつものようなスポーツ界の内幕もの…
「ウィチャリー家の女」「さむけ」などの正統派ハードボイルドで知られるロス・マクドナルド晩年の作品が本書(1973年発表)。このあと「ブルー・ハンマー」(1976年発表)という作品があるが、1983年に亡くなった。享年67歳。 ハメット・チャンドラー・マク…
本書の作者、J・C・S・スミスは覆面作家である。高名なノンフィクション作家が身元を隠して書いたのが本書(1984年発表)だ。格式高い著述家が、本当はミステリー好きでミステリーを書きたいのだが「先生ほどの人が下世話なものを・・・」と非難されるのが嫌だった…
本書は2004年発表のスペンサーもの。かなり残り在庫も少なくなってきたせいもあって読まないでいたのだが、先日「ダブルプレー」という作品を読んで、この作者の簡潔な文体・会話の面白さを再確認した。この作品は、黒人大リーガーのパイオニアであるジャッ…
ボストンの軽妙な私立探偵スペンサーものしか読んだことのなかったロバート・B・パーカーのノンフィクション風ハードボイルドが本書。アメリカ人なら「誰も」が知っている近代最初の黒人大リーガー、ジャッキー・ロビンソンとその周辺の人物が実名で登場する…
本書は正統派ハードボイルド作家、、ロス・マクドナルドの後期の作品(1969年発表)。大家だと思っていた作者だが、リュー・アーチャーものを18編、その他を6編しか発表していない。1949年「動く標的」でデビューした作者とアーチャー探偵、以前紹介した「…
ドナルド・ハミルトンという作者の名前は、どこかで聞いた記憶がある。狙撃手とギャング風の男のイラスト、魅力的なタイトルなので買ってしまってから作者のことを調べてみた。ハミルトンは「マット・ヘルムシリーズ」の原作者だった。それで名前に記憶があ…
本書の作者A・A・フェアは知らないという人も、ぺリー・メイスンという弁護士のシリーズには記憶があるのではなかろうか。A・A・フェアとは、ペリー・メイスンシリーズの原作者E・S・ガードナーの別名である。ガードナーは、私立探偵ドナルド・ラムと…
ハードボイルドの雄レイモンド・チャンドラーは、長編を7作しか残さなかった。1958年発表の本書が、その最後の作品。代表作「長いお別れ」を発表後、作者は4年間沈黙していた。そして本書発表後に亡くなっている。実は「プードルスプリングス物語」という…
本書はスポーツエージェントで「MBスポーツレップス」の経営者であるマイロン・ボライターが主人公の第四作。アメリカンフットボール、テニス、バスケットボールの世界を舞台にした三作に続き、本書ではゴルフの世界が描かれる。 最もマイロンはゴルフをスポ…
本書はハーラン・コーベンのマイロン・ボライターものの第三作。スポーツエージェントであるマイロンとその仲間たちの活躍を描いた作品群で、これまでフットボールとテニスの世界での事件を扱っている。いずれもプロの契約金やCM出演料、果ては裏金まで、膨…
サラ・パレツキーのV・I・ウォーショースキーものの第三作が本書。ヴィクことミズ・ウォーショースキーはアラサーのバツイチ女探偵、ホームグラウンドはシカゴである。僕は経験がないが、シカゴの冬は零下30度にもなるという。この極寒の街で、ヴィクは大掛か…
ロバート・B・パーカーのスペンサーシリーズも本書(2003年発表)で30作となった。スペンサーは朝鮮戦争従軍経験もあるということだったから、普通ならこの時点で70歳を越えているはずだが、私生活含めて若々しい。ただスーザンと飼っていた愛犬パールは前作…
ニューヨークという街も、意外と自然環境が厳しいようだ。蒸し暑く、少し歩いただけで汗がしたたり落ちると本書にある。暑さがピークの8月、大富豪はみなヨーロッパに行ってしまう。裕福な人たちは、国内だが夏の別荘に出掛けて留守。一般の労働者も、かな…
シカゴの女探偵ヴィクことV・I・ウォーショースキーが登場する第二作が本書。前作で巧妙な保険金詐欺を暴いた彼女は、五大湖の巨大な海運事業にかかわる事件に挑む。ヴィクのたった一人の親近者であるブーム・ブーム青年が死んだ。彼はヴィクの従兄弟にあたり…
あとがきの後の解説には、本書のようなものを「軽ハードボイルド」というのだとある。表紙のアニメも含めて、いかにも軽めの私立探偵ものだなという印象を与えている。シアトルを舞台に活躍する私立探偵ジェィグ・ロシターとその仲間たちの物語で、本書に続…
古典的な本格ミステリーを、「明晰神のごとき名探偵が・・・」などと評するが、オーギュスト・デュパンを先祖とするこの種の人たちが「私立探偵」を業として営んでいる例は多くない。ファイロ・ヴァンスは貴族の遊民だし、エラリー・クィーンは作家、ミス・マー…
以前「裁くのは俺だ」を紹介したが、その作品でデビューしたのがバイオレンス作家のミッキー・スピレーンとその主人公マイク・ハマー。本書はマイク・ハマーものの5作目にあたる。書評では通俗的なハードボイルドの亜流と紹介され、タブロイド紙専科のよう…
以前「悪党パーカー/人狩り」を紹介した、リチャード・スタークの「悪党パーカーシリーズ」の21世紀になってから書かれたものが本書(2001年発表)。「人狩り」が1962年の作品で、以降15冊が出版されたが1974年の「殺戮の月」で一旦終了していた。それが199…
前作「ポットショットの銃弾」で派手な銃撃戦を見せたスペンサー、今回はホームグラウンドに戻って富豪の銀行家殺人事件に挑む。銀行オーナーのネイザン・スミスは58歳、ベッドルームで全裸の射殺体で発見される。凶器は珍しい.40口径の拳銃。寡聞にしてこん…
ある日スペンサーのところに西部から来た若妻メアリが訪ねてきて、夫を殺した奴を捕まえてくれと訴えかける。彼女の住む町ポットショットは荒れ地に囲まれた山間の町で、巣くったならず者集団<ザ・デル>に脅かされている。彼女の夫スティーブは海兵隊上が…