新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

業界情報

医師が勧める「死に方」

本書の著者中村仁一氏は、特別養護老人ホームの「配置医師」である。この見慣れない肩書は、行政用語で老人ホームに常勤する医師の事らしい。筆者は本書執筆の時点(2011年)で、すでに12年も社会福祉法人「同和園」でこの職にある。医師の世界には本来ラン…

20年ぶりに買いました

普段、本屋と言えばBOOKOFFしか行かない僕だが、この日丸の内オアゾの書店にふらりと入った。雑誌コーナーを見ると、懐かしい軍事史もの(歴史群像)が健在だった。その隣にあったのがこれ。発行社は(株)ジャパン・ミリタリー・レビュー、発刊1966年。50年…

巨大利権を持つNPO

本書は、ちょうど「東京オリ/パラ」の1年延期が決まった、2020年5月に発表されたもの。著者の後藤逸郎氏は、毎日新聞で<週刊エコノミスト>編集などに携わったジャーナリスト。「オリンピック・マネー」という題名通り、このイベントにまつわるカネ・利…

地獄の沙汰も金次第

あまりTVは見ないから知らないのだが、TBS系の人気番組に「クレイジージャーニー」というものがあった(2015~19年)そうだ。紀行バラエティ番組なのだが、世界の通常の旅行者が行かない様な所を巡る旅人をスタジオに呼び、その体験談を語ってもらうものだと…

建築業イノベーションのヒント

2016年発表の本書は、建築家森山高至氏が自戒を込めて建築業界の課題を公表したもの。冒頭、東京オリ/パラのための新国立競技場の話が出てくる。一旦採択されながら廃案となったザハ・ハディド案は、そもそも建設不能だったという。彼女は「Unbuilt Queen」…

アカウンタビリティ・ジャーナリズムの実例

昨日「データ・リテラシー」のメディア論を紹介して、ジャーナリズムのあるべき姿として権力者などの知られたくないことを暴く<アカウンタビリティ・ジャーナリズム:調査報道>について勉強した。これはジャーナリズムの本来あるべき姿なのだが、労力もリ…

21世紀のメディア論

2020年発表の本書は、フリージャーナリストであるマーティン・ファクラー氏のメディア論。筆者はAP通信やNYタイムズの東京支局長を20年に渡って務め、日米のメディア業界に精通している。 第四次産業革命の時代、重要なのはデータであるが、データの改ざんも…

米中覇権争いとデジタル産業

2019年発表の本書は、激化する米中対立のなかでヤリ玉に挙がった中国企業(特にHuawei)と、5Gを巡る各国の思惑をレポートしたもの。著者の近藤大介氏は講談社の中国支社長を経験したジャーナリスト。深圳を始めとする、中国デジタル産業の内懐に入ったルポ…

大前流、人生100年時代の計

本書は、経営コンサルタントの大前研一氏が「COVID-19」禍が始まった2020年の夏に、「個人が企業を強くする」という単行本の内容を加筆・訂正し、新書化して再出版したもの。もうじき80歳になろうという著者だが、舌鋒はますます鋭い。 テレワークに関して「…

死刑判断は法律論にあらず

2012年発表の本書は、東京地裁などの裁判官を経験して現在は弁護士である森炎氏の著書。裁判員制度施行後3年経ち、死刑判断に変化が出ていることを論考したもの。有罪・無罪だけではなく、量刑まで裁判員が決めなくてはならない。死刑判決を下すにあたり、…

ますます必要なメディア・リテラシー

昨日廣淵升彦著「メディアの驕り」を紹介して、新聞・TVの偏向報道が多くなり、市民は判断力を持たないといけないとの思いが強くなった。「メディア・・・」は2017年発表だがその1年後に、産経新聞出身のジャーナリスト高山正之氏と、NHK出身の自民党参議院議…

市民に求められる判断力

2017年発表の本書は、国際ジャーナリストの廣淵升彦氏が日本メディアの問題点を示し、市民への警鐘を鳴らしたもの。ロシアのクリミア併合などがあり、日本の報道が偏向していることが執筆のきっかけになったと思われる。今やロシア・ウクライナ紛争は「情報…

サラリーマンのサバイバル術

本書の巻末に、筆者(成毛眞)の略歴がある。1979年中大卒、メーカー、アスキーを経て1986年Microsoft入社、日本法人社長となり2000年退社。(株)インスパイアを設立して社長就任、2008年取締役創業者、となっている。僕自身も関わりを持った、同年代の企業…

「COVID-19」は何を変えたか

本書は、昨日紹介した「めいろま」さんのアドバイスVol.2。2020年末の発表で、「COVID-19」禍で世界が大きく変わった後の、日本と世界を考察している。日本でも政府の「COVID19」対応は批判を浴びた。初代担当大臣西村議員の著作の評判も悪い。しかし、筆者…

「めいろま」さんのアドバイス

2019年発表の本書は、元国連職員でイギリス人の夫君を持つ谷本真由美氏の国際情報書。筆者は「@May_Roma」のアカウントで舌鋒鋭いツイートをする人としても知られている。序章「日本人はなぜ世界のニュースを知らないのか」に始まり、日本人が知らないものと…

金正恩はスマホを使う

今年になって再三のミサイル発射を続けている北朝鮮、ロシアのウクライナ侵攻で世界の目がそちらに向いているのが気に入らないらしい。せっかく米国バイデン大統領が極東にやってきたのに、韓国・日本を訪問しオーストラリア、インドとの首脳会談もしたのに…

サスティナビリティ経営は総合格闘技

2020年発表の本書は、サスティナビリティ経営・ESG投資アドバイザーの夫馬賢治氏が、SDGsなどの目標に向けた産業界の動向や、現状の見通しをまとめたもの。サスティナビリティ経営はすでにイメージアップ戦略ではなくなり、多くのグローバル企業が本気で取…

事前捜査をする組織

本書(2004年発表)は、以前「憲法が危ない!」を紹介した鈴木邦男氏が、新右翼・合法右翼の組織である<一水会>の代表として公安警察とは永い付き合いでの経験から書いたもの。本人は1999年に代表を退き引退したつもりだったが、相変わらずマークされてい…

法曹界の中のさらに狭い世界

日本のミステリーでも、法廷ものと言えそうな作品もいくつかある。米国では陪審員制度があって、悪徳弁護士(ペリー・メイスンのことじゃないよ)が詐術で素人の陪審員から無罪評決を出させるシーンも絵になる。しかし日本ではプロの裁判官が判決を下すので…

「白い巨塔」から「ドクターX」へ

業界情報はどの分野のものでも面白いのだが、本書(2017年発表)の面白さは傑出している。筆者の筒井冨美氏は、フリーランスの麻酔科医。もともとは医大の勤務医だったが、40歳ごろフリーランスに転身している。まだ医局が権威に溢れていた「白い巨塔」の時…

NPBは活況だというが

本書の発表は2020年6月、「COVID-19」で種々のものが自粛・閉鎖に追い込まれる前に脱稿していると思われる。書写の安西巧氏は日経新聞の編集委員、企業取材が得意で、幅広い分野に見識がある。本書も日本プロ野球(NPB)を論じているのだが、主軸は経営視点…

個人の「メディアリテラシー」

今月、ネット上の誹謗中傷対策として、侮辱罪の厳罰化が閣議決定されている。これまで「30日未満の拘留か、1万円以下の罰金」だったものを「1年以下の懲役(or禁固)か、30万円以下の罰金」にするというもの。インターネットの拡散力を考えればこれでも軽…

高級料理店の裏側

2014年発表の本書は、その前年起きた「食品偽装事件」を扱っているものの、著者はそのインパクトで書いたものではないという。バナメイエビを車海老と称していたことなど、この業界には一杯あるというのだ。それよりも高級店と称する店のいくらかが堕落しき…

日本型雇用が生んだ孤独な老人

本書は2017年発表、著者の楠木新という名前はペンネームだとある。大手保険会社を2015年に定年退職、現在は楠木ライフキャリア研究所代表。就職する時、さだまさしの「関白宣言」が流行っていたとあるから、僕と同世代の人。自らの研究所でもコンサルなどし…

教育とビジネスの過渡期

2020年発表の本書は、小泉・竹中改革以降の大学組織の変貌により、若い研究者が搾取されている実態を告発したもの。著者の山田剛志氏は、大学教授と弁護士の両面を持つ人。「産学共同研究」は、国立大学を法人にした2003年から推進され、現在まで大学に流入…

共謀罪がキーワード

本書は、まだ東京オリ/パラが2020年に行われると考えられていた2017年に、「テロリストが東京オリ/パラを狙ってくる。あと3年もない」と警鐘を鳴らす目的で出版されたもの。著者の今井良氏は、NHKから民放に移り警視庁担当を務めた人。「マル暴捜査」など…

「タックスヘイブン」の仕組み

2016年4月、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、パナマにある法律事務所<モサック・フォンセカ>から流出した1千万件を超えるデータを公表した。いわゆる「パナマ文書」である。この法律事務所は違法・合法すれすれの租税回避措置などを扱ってい…

日本メディア再生のヒント

2020年発表の本書は、半世紀にわたり日本を取材してきた伝説のジャーナリスト、ヘンリー・S・ストークス氏が、日本メディアの問題点を指摘した書。筆者は、 ・フィナンシャル・タイムズ ・ロンドン・タイムズ ・ニューヨーク・タイムズ の東京支社長を歴任した…

川上産業としての半導体

経済安全保障の議論の中で注目されているのが「半導体産業」。かつて日本企業の世界シェアは5割を超え「ソ連の後の主敵は日本」と米国に脅威を与えたのだが、今や半導体デバイスの生産ではシェアは1割もない。そこに世界的な半導体不足の波が来て、政府が…

遅れてきた金融対外開放

本書は発表(2019年)時、金融庁の総政局課長兼中国ディレクターだった柴田聡氏が、日中金融協力促進の持論を述べたもの。現役官僚が、この種の本を書くのは珍しいと思う。中国経済を扱った書としては、中国経済の崩壊・危機を扱ったものが8割、残り2割は…