新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

SF・ファンタジー

ジュラシックパーク、1912

コナン・ドイルは自分を有名にしてくれたシャーロック・ホームズを、本当は好きではなかったようだ。一度はスイスの滝壺に落として殺したつもりだったが読者の熱望で生き返らせるしかなかった。それに比べると、登場作品は少ないものの、本書の主人公チャレ…

後ろから書いてゆく小説

有名なヒッチコック監督のサスペンス・ホラー映画「サイコ」、シャワーを浴びる女性を切り刻むシーンに始まり、衝撃のラストまで「怖いもの見たさ」で見てしまった映画だった。演出はもちろんだが、子供のころにストーリーの怖ろしたをしっかり味わった記憶…

惑星タイタンのナメクジ

「宇宙の戦士」などのSF作品で有名なロバート・A・ハインラインは、5年間海軍士官として駆逐艦などに乗り組んでいた。しかし第二次世界大戦を前に病気を得てエンジニアリングの世界に転じ、大戦中はレーダー関係の技術者として「カミカゼ」の検知技術向上に貢…

昭和11年2月26日の密室殺人

とにかく読み進むのに重くて、手が疲れる小説だった。宮部みゆきのSF・歴史小説「蒲生邸事件」は、新書版で530ページの大長編である。作者は1986年に「オール読物推理小説新人賞」の候補になって以降、数々のミステリー・SF・ファンタジー・時代小説を書き、…

Science Fact小説の草分け

新型コロナウィルスが暴れまわっているからというわけではないが、本棚から本書を引っ張り出してきた。作者マイクル・クライトンは、ハーバード・メディカルスクール在学中から小説を書き始め「緊急の場合は」(1968年発表)でデビュー、本書(1969年発表)…

火星と地球の運命

レイ・ブラッドベリは不思議な作家である。一応SF作家と分類されているようだが、幻想文学者という表現の方が正しい。単にファンタジー作家というには、作風が重すぎるのだ。どちらかというと短編のキレに鋭さがあり、「十月は黄昏の国」という短編集は高…

円には端がない

本書はアイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」第三巻、ここで宇宙大河ドラマは一応の終わりを迎える。一応の・・・と言ったのは、この後30年を経てアシモフが第四巻「ファウンデーションの彼方へ」を発表、第五巻にも取り掛かるという情報があったからだ。 …

WWWAのトラブルコンサルタント

SFはあまり読まない僕だし、ましてやスペースオペラというジャンルは全くといっていいほど読んでいない。E・E・スミスのレンズマンシリーズなど、手に取ったこともない。それでも、このシリーズだけは読んでいた。高千穂遥のダーティペアシリーズ。「S-…

予想できなかった歴史

本書はアイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」の第二作。巨大な帝国の衰退を予知した歴史心理学者ハリ・セルダンは、帝国崩壊後の暗黒時代を短くするため2つのファウンデーション(百科事典財団)を辺境に設けた。第一作は第一ファウンデーションが誕生…

百科事典による国際政治

今まで「黒後家蜘蛛の会」などのミステリーを紹介したアイザック・アシモフだが、いかにミステリー好きとは言え本業はサイエンスフィクションである。数ある著作の中でも、傑作と言われるのが前回紹介した「鋼鉄都市」と本書から始まる「銀河帝国興亡史」だ…

スペースオペラ、ここに始まる

いわゆるサイエンスフィクション(SF)の古典と言えば、フランスのジュール・ヴェルヌ「月世界へ行く」、イギリスのH・G・ウェルズ「宇宙戦争」などが挙げられるだろう。SFっぽいものも残したE・A・ポーはアメリカ人だが、アメリカで始祖と言えば本…

アシモフの見た100年後

SFの巨人アイザック・アシモフは、「ロボット(工学)三原則」を定めたことで有名だが、この原則に関して1940年から1950年までの10年間に書き続けた短編を集めたものが本書。最近映画化もされたのだが、第二次世界大戦中から書かれていたことに驚いた。 人…

幻のカルトTVドラマ

シリーズものならいざ知らず、全く新しい作者・作品で、小説として出版される前にTVもしくは映画になることは多くない。ところが本書に収められている長めの中編のひとつ「ラスヴェガスの吸血鬼」は、フリージャーナリストであった(当時26歳の)ジェフ・…

ドイルの「地球最後の日」

シャーロック・ホームズものでおなじみ、サーの称号も貰ったコナン・ドイルはSFものにも興味を示しもう一人の主人公チャレンジャー教授を生み出した。長身でノーブルなホームズに比べ、類人猿と間違えられそうな外観、短躯で毛むくじゃらという人好きされ…

核戦争の危機とファンタジー

フィリップ・K・ディックという作家も、不思議なひとである。スタンリー・エリンとも、G・K・チェスタトンとも、ロアルド・ダールとも違う。作品もSFというべきか怪奇ものというか、区分しづらい。一番大きな括りで、ファンタジー作家というのが適切なよう…

BEM(Bug Eyed Monster)との闘い

SF(Science Fiction)は、子供の頃こそ好きだったような気がする。それも書籍ではなく、TVドラマとして。「宇宙家族ロビンソン」や「サンダーバード」は大好きだった。中学生になると、「Star Trek」以外のSFものは見なくなった。もっぱら、謎解き本…

宇宙人殺人事件

「黒後家蜘蛛の会」という短編ミステリーシリーズを以前紹介したが、作者のアイザック・アシモフを定義すると、「探偵小説好きの科学者がSF作家をしている」ということになろうか。彼は1920年にスモレンスク周辺の街で、ユダヤ教徒の家に生まれた。3歳の時…