新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

仮装巡洋艦「オレゴン」

海が大好きで海洋冒険譚を膨大に公表しているクライブ・カッスラーの、2013年の作品が本書である。これまで国立海中海洋機関(NUMA)の冒険家ダーク。ピットを主人公にしたものがたくさん出版されたが、日本ではその多くが絶版になっているらしい。 ダーク・…

狙撃銃モシンナガンM1891

アンディ・マクナブも、SAS出身の覆面作家である。湾岸戦争で「ブラボー・ツー・ゼロ」という部隊に所属し、イラク軍のスカッドミサイル発射拠点を探るパトロールを指揮した。任務の途中で敵に発見され8名の隊員のうち3名が戦死、マクナブを含む4名が捕虜…

シカゴの女私立探偵登場

シカゴ在住の女流ミステリー作家、サラ・パレッキーの最初の作品が本書。同じくシカゴで活躍する女性私立探偵V・I・ウォーショースキーを主人公にした長編が、いままで18作発表されている。ウォーショースキーは名前の通りポーランド系、警官だった父親か…

国名シリーズ最高傑作

S・S・ヴァン・ダインのファイロ・ヴァンスものが好評を博す中、そのペダンティックな言動に辟易するとの意見も出てきた。そこで登場したのが、エラリー・クイーンという青年(たち)作家。パズル小説としてのフェアプレイはもちろんのこと、本格ミステリー…

空の架空戦記

横山信義を海の架空戦記作家とするなら、こちらは空の架空戦記作家と呼ぶべきかもしれない。第二次世界大戦をベースに、少しアイデアを盛り込んでIFの世界を描くという共通点がある。いずれも、20年ほど前に気楽に読んだものである。じゃあ陸の架空戦記作…

ミステリーの始祖、E・A・ポー

詩人・批評家・編集者でもあるポー(Edger Allan Poe)は、1809年ボストンに生まれている。まだナポレオン1世が大陸に覇を唱えているころであり、アメリカ合衆国も独立から半世紀も経っていない。1830年代からいろいろなジャンルの文学を扱い自らも著わして…

幕末、京都に咲いた徒花

幕末の中でもほんの一時期、京都で剣を振るい耳目を集めた剣士集団「新選組」。最大でも200名を超えたこともなく、募集・内紛・脱走を繰り返したある意味無頼な浪人の集まりであるのに、日本人の認知度は高い。これは子母澤寛の名著「新選組始末記」に拠ると…

スペンサーを継ぐもの

レンジャー隊員を主人公にしたアクション・犯罪小説は多い。本書も保安官をしていた伯父の葬儀に参列するため、アフガニスタンから10年ぶりに故郷に帰る一等軍曹クウィン・コルソンが地元にはびこる悪人と戦う物語だ。ありふれた設定だが、特に手に取った理…

伝説の狙撃手が見たイラク戦争

クリス・カイル上等兵曹は特殊部隊SEALのメンバーとして4度イラク戦争に従軍し、160人もの敵を殺したという。米軍はかなり厳密な公式記録精度を持っていて、その場で第三者によって死亡が確認されたものを「射殺」と認めているので、実際に死傷させたの…

ジム・トンプソン事件を追うマルコ

1967年3月、バンコク在住の絹ビジネスマンであるジム・トンプソンは、マレーシアの高級別荘地キャメロンハイランドで消息を絶った。8月にはアメリカ在住の実姉が殺害されるという事件もあったが、いずれも未解決のままである。ジム・トンプソンのシルクは…

大艦巨砲主義

1920年代、世界のビッグセブンといわれた戦艦は7隻。日本の長門級(長門・陸奥)、米国のコロラド級(コロラド・メリーランド・ウェストバージニア)、英国のネルソン級(ネルソン・ロドネイ)である。40cm級の主砲を持った7隻ということだった。戦艦が最…

マザーグースと科学と殺人

「グリーン家殺人事件」で大ヒットを飛ばしたヴァン・ダインは、1929年に第四作「僧正殺人事件」を発表した。これも前作同様の大ヒットとなり、アメリカの本格ミステリー界はピークを迎える。この年、エラリー・クイーンもデビューしている。 前作の富豪一家…

浴槽から大海へ

テリー・ヘイズという人はジャーナリストだったが、映画「マッドマックス2」から脚本を書き始め、クリフハンガー・サラマンダー・フライトプランなどの脚本を手がけた才人である。彼が、2012年小説家としてのデビューを果たしたのが本作「ピルグリム」であ…

戦隊指令、アマンダ・ギャレット

「現代のホーンブロワー」アマンダ・ギャレット、三度目の登場である。アルゼンチン空・海軍を単身引き受けて戦い、中国軍の核攻撃を阻止するため長江を遡上したステルス艦「カニンガム」は、中国軍との戦闘で傷つき兵装強化の改装も含めてドック入りしてい…

巨大輸送機の闘い

航空機を中心に据えたミリタリー小説は多いが、輸送機が前面にでてくるものは珍しい。作者のジョン・J・ナンスももちろん軍人だが、巨大輸送機ロッキードC-141の機長をしていたことがあるらしい。 ◆C-141 スターリフター ・全幅 48.74m ・全長 51.29m ・最…

卑しき街の孤高の騎士

正統的ハードボイルドというと、ダシール・ハメット⇒レイモンド・チャンドラー⇒ロス・マクドナルドという系譜が思いつく。今回はその次男坊、レイモンド・チャンドラーをご紹介したい。主人公フィリップ・マーロウは、ハリウッドに住む私立探偵。作中では、…

デフ・マン三度目の挑戦

1956年に第一作「警官嫌い」が発表されてから、エド・マクベインはコンスタントに87分署シリーズを発表し、1973年に出版された本編は27作目である。12作目「電話魔」で登場しキャレラ刑事に重傷を負わせ、22作目「警官(サツ)」でもおなじみの刑事たちを…

監視社会アメリカ、2012(後編)

ATS(アダプティブ・テクノロジ・ソリューションズ)は国家安全保障会議にも入り込んでいて、極秘抹殺予定者リスト(題名ともなっているブラック・リスト)に勝手に名前を付け加えることも出来る。本来は、オサマ・ビン=ラディンのようなアメリカに敵対…

監視社会アメリカ、2012(前編)

作者ブラッド・ソーはライター、プロデューサーなどを経て「傭兵部隊<ライオン>を追え」でデビューしたミリタリー作家である。驚いたことに共和党のシンクタンク「ヘリテージ財団」のメンバーでもある。本書の中にもブルッキングス研究所のレポートが紹介…

陪審員たちの闘い

ミステリーのひとつのジャンルに「法廷もの」がある。有名なのはE・S・ガードナーの「ペリー・メイスンシリーズ」だが、これはハイライトを法廷に持って行った普通のミステリーと言えなくもない。法廷もののマニアの中では「最初から最後まで法廷だけを描写…

SAS出身の覆面作家

クリス・ライアンという作家は、イギリス軍の特殊部隊SAS(Special Air Service)で狙撃手の務め、湾岸戦争でイラクでの戦果によりミリタリー・メダルを授与されている。湾岸戦争では、スマートな爆弾が使用され目標に向かって軌道を修正しながら命中させ…

一人称ミステリー

ハメット、チャンドラー、ロス・マクドナルドなどのハードボイルド小説は、「私」の視点で書かれた一人称ミステリーだった。この手法は主人公の考えや人柄を表すのに向いているものの、私の視野以外のことがらを書くことができないので制約も大きい。 本格ミ…

ヘンリー・メリヴェール卿登場

第一次世界大戦時の海軍大臣でガリポリ上陸作戦の失敗を経験したウィンストン・チャーチル卿は、第二次世界大戦の勃発で「戦時首相」の職に就く。本書の発表1934年当時は、政権から距離を置き不遇をかこっていたころである。それでも有名人であったことに間…

南から北へ、12のお城

海音寺潮五郎という作家には、あまり縁がなかった。歴史ものを多く残した人で、故郷の英雄西郷隆盛の史伝を執筆中に亡くなったという。僕自身は、小学生のころに「天と地と」を読んだくらいしか記憶がない。その年大河ドラマで「天と地と」が放映されていて…

黄金の20年代の始まり

エドガー・アラン・ポーの創始になるミステリーというもののうち、本格探偵小説という分野が黄金時代を迎えたのは1920年代からだろう。アガサ・クリスティのデビューも今回紹介するフリーマン・ウィルズ・クロフツのデビューも1920年である。 1926年には、S…

雪に閉じ込められた列車で

ミステリーの女王アガサ・クリスティは、初期のころは特に「意外な犯人」を追及した。古典的なミステリーファンに聞くと、彼女のベスト3は、「そして誰もいなくなった」「アクロイド殺害事件」と、本作「オリエント急行の殺人」との声が多い。いずれの作品…

インドの軍事スリラー

高級織物カシミアを産し、カラコルム山脈を背景にした美しい土地であるカシミール地方。ここを舞台にした、インド発のミステリーに出会った。ミステリーと言えば英米が主体、フランスのものは少し経験したが、ドイツ・ロシアのものは過去に1編づつしか読ん…

鉄道考古学者の旅

作者の宮脇俊三という人は、中央公論社の役員まで務めた後は好きな鉄道を追いかけて、中国、シベリア、インドまでも行ったうらやましい人である。在職中から金曜日になると落ち着かないという理由は、来週金曜日の夜行列車の予約をするかどうか迷うから。か…

デンマークの現代アクション小説

ギャビン・ライアル「もっとも危険なゲーム」で扱われたのは、銃を持った人間を最後の狩りの相手とするまでエスカレートしたハンターの異常心理だった。この作品は1963年の発表だが、その50年後やはり北欧を舞台にした同じテーマのアクション小説が生まれて…

悪い奴のお金の話

ドナルド・E・ウェストレイクという作家は作風の広い人で、いくつかのペンネームを使い分けている。その一つがリチャード・スターク。かれはこの名前で「悪党パーカー」シリーズを20作近く発表している。その第一作が本書(1962年)。 冒頭ニューヨークと思…