新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

巨大利権を持つNPO

本書は、ちょうど「東京オリ/パラ」の1年延期が決まった、2020年5月に発表されたもの。著者の後藤逸郎氏は、毎日新聞で<週刊エコノミスト>編集などに携わったジャーナリスト。「オリンピック・マネー」という題名通り、このイベントにまつわるカネ・利…

鉄道愛に溢れたエッセィ

大手の出版部長だった作者は、子供のころからの鉄道(というか汽車)好き。小学校入学前から時刻表を読みふけり、周囲は「神童」と思ったらしい。それが高じて日本中の国鉄全部乗るという快挙を成し遂げ「時刻表2万キロ」という著書で文壇デビューを果たし…

ホープ弁護士登場

多くのペンネームを持ち、多様な物語を発表した才人エド・マクベイン。もちろん有名なのは「87分署シリーズ」なのだが、そのほかにも本書(1976年発表)に始まる「ホープ弁護士シリーズ」をこの名義で何冊か発表している。舞台は、大都会を遠く離れたフロリ…

在英米国大使の娘婿

1999年発表の本書は、CNNのジャーナリストから謀略小説作家に転じたダニエル・シルヴァの第三作。デビュー作「マルベリー作戦」は第二次世界大戦中の謀略戦を描いたものだったが、第二作「暗殺者の烙印」では現代に舞台を移し、CIAのエージェントであるオズ…

オレンジ郡のシングルマザー巡査部長

T・ジェファーソン・パーカーという作者の作品を読むのは、初めて。巻末の解説によると2002年の「サイレント・ジョー」と2004年の「カリフォルニア・ガール」で2度米国探偵作家クラブ最優秀長編賞を獲った実力派だ。1年に1作程度という現代作家としては寡…

喜歌劇「魔法使い」の陰で

1985年発表の本書は、シャーロット・マクラウドの「セーラ&マックスもの」の第6作。前作「消えた鱈」では、ようやく新婚気分も落ち着いたところでセーラとマックス夫婦が純銀製の鱈を巡る事件に巻き込まれる。セーラはあまたある伯父叔母のなかでも特にう…

ワインに合う食べ物

先月「ワインの便利手帳」で、ワインの楽しみ方の基本を勉強した。 ・宅呑みワインの選び方 ・そのカタログと合わせる料理 ・外食時のワインの選び方 などを一通り知ることができた。そうなると、どうしても試してみたくなるもの。それももう少し具体的に、…

「一帯一路」起点の人権

2019年発表の本書は、産経新聞で香港・北京取材が長かったジャーナリスト福島香織氏の新疆ウイグルレポート。習大人のグローバル政策「一帯一路」の陸の起点となる地域だが、ウイグル族他のイスラム教徒が多い地域に漢民族が入植を続けている。 ウイグル他の…

パスポートを取った後に

本書は、これまで3冊を紹介してきた21世紀研究会の「世界地図シリーズ」の1冊。国や民族が異なると、生活上の常識にも大きな乖離がある。特に前回紹介した「イスラーム」については、勉強させられることが多かった。 日本もグローバリズムが進んできて、居…

分銅鎖が得意な目明し

5大捕物帳の他にも、日本特有の歴史ミステリー「捕物帳」は存在する。捕物帳というのは、与力・同心が目明したちの報告を受けて奉行などに報告するために書きつけておくメモのようなものだ。実際、市井のことに詳しくない御家人では市中の犯罪捜査は難しい…

行動経済学の入門書

「競争と言うと、とかく日本では否定的に捉えられるが、自分の強みを見つけ社会を活性化させる機会」というのが、裏表紙の言葉。新自由主義の本かなと思って買ってきたのだが、そうではなく「行動経済学」の入門書だった。 著者の大竹文雄氏は大阪大学の教授…

各国諜報機関の評価

本書は、何冊かインテリジェンス関係の著書を紹介している、元外務省分析官佐藤優氏の各国の諜報機関を分析した書。元原稿は、<EX大衆>に2008~2011年にかけて連載されたものだ。ゾルゲ事件など歴史上で諜報機関が関わったことの解説(解釈?)で始まり、…

歴史に学ぶ「戦闘教義」

本書は以前「三千年の海戦史」など戦略・戦術論を紹介している、松村劭元陸将補の歴史教本。冒頭「戦争学」が英米等では立派な学問として成立しているのに、日本では「考えたくないことは考えない」との風潮があって、軍事的な研究が貶められているとの嘆き…

パンデミック下の政治2020

本書は2020年1年間の、各国の対応状況を政治指導者に焦点をあててまとめたもの。ベルギー在住のジャーナリスト栗田路子氏が、各国の日本人ライターに声をかけて、現地の生々しい状況をレポートしてもらっている。 読んでみて、あらためて日本に入ってくる情…

中性子弾対EMP弾

昨年大石英司の「サイレントコア」シリーズの1編「魚釣島奪還作戦」を紹介したが、作者がもうひとつシリーズ化していたのが「UNICOON」もの。国連が軍事的即応部隊を極秘に持っていたという設定(その資金は日独が提供)で、1990年代に多く発表されている。…

ネット規制強化論の背景

先週、JCLUセミナーの書籍化で、米国他の政府が市民監視にインターネットを役立てているかを紹介した。本書は、逆に政治家(特に選挙)に対してインターネット経由でどのような影響が与えられるかを論じたもの。2018年の発表で、著者の福田直子氏は「大真面…

すっかり「宅呑み」になった僕らに

「COVID-19」禍は、僕らの生活をすっかり変えてしまった。海外出張&旅行が出来なくなったのは残念だが、マイレージで貰うワインで研鑽(!)を積み、レストランが閉まった影響で手が届くようになった食材を試すこともできた。加えて今年になってからは、<K…

潜っていたスリーパー「蝉」

2013年発表の本書は、先日「窓際のスパイ」を紹介したミック・ヘロンの<泥沼の家シリーズ>第二作。作者は本書で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞している。MI5の落ちこぼれ組織<泥沼の家>では、前作の闘いで2人の欠員ができた。補充されてきたのはやり…

帝国陸軍が遺したもの

本書は、ミャンマー在住で月刊情報誌「MYANMAR JAPON」を発行しているジャーナリスト永杉豊氏が、クーデター後の同国を2021年にレポートしたもの。この年の2月に、国軍総司令官ミン・アウン・フラインがクーデターを起こし、民主化政権の中心人物を拘束・投…

B20国サウジアラビアの正体

一昨年のB20議長国だったサウジアラビア、別ブログで何度かとりあげているがデジタル屋にとっては中露と並ぶ困ったちゃんである。 行けなくて良かったかも - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com) ところが本書を読んで「国際データ流通に竿差す国」程度…

JCLUセミナー第二弾

本書は、先月「スノーデン日本への警告」を紹介したJCLU(公営財団法人自由人権協会)が、スノーデンらを招いて行ったセミナーの第二弾。前著から1年、2017年のセミナーを書籍化したものである。今回大きく取り上げられていたのが「XKEYSCORE」という市民監…

砂漠の老女と「子連れ狼」

1990年発表の本書は、題名を「A」から順に付けていくスー・グラフトンの第七作。前作「逃亡者のF」で自宅を爆破されてしまった女私立探偵キンジー・ミルホーンは、大家さんのヘンリー(80歳)や食堂の女主人ロージー(65歳)から孫子のように可愛がられて…

外交の勘なきは亡国

昨日元外務省分析官佐藤優著「ヤンフスの宗教改革」を紹介して、外交官には神学も必要との主張に(そこそこ)納得した。しかし一国の外交を担う者として、もっと多くの知識や教養が必要なはず・・・と思って手に取ったのが本書(2020年発表)。<外務省研修所>…

神学は外交の必要スキル

本書(2020年発表)は何冊かIntelligence関係の書籍を紹介している、元外務省分析官佐藤優氏の近著。Book-offで最初に手に取った動機は、現役時代南部ドイツのコンスタンツという街で1年の1/4を過ごした経験があったから。表題にあるヤン・フスなる人物は、…

日本人は基本的に異質

1992年発表の本書は、「アンドロメダ病原体」などを紹介した才人マイクル・クライトンのミステリー。700ページ近い大作だが、テーマとなっているのは「日本の米国侵略」、もちろん架空戦記ではない。 ベルリンの壁が崩れ、ソ連が崩壊、中国はまだ台頭してい…

アバネシー家の7人兄妹

1953年発表の本書は、女王アガサ・クリスティの「ポワロもの」。解説を大仕掛けが得意のミステリー作家折原一が書いていて、本書がクリスティ女史のベスト1だと評価している。ちなみに彼のベスト3は、 1)葬儀を終えて 2)ナイルに死す 3)白昼の悪魔 …

麻薬と宗教に溺れる娘

本書(1929年発表)は、ハードボイルド小説の創始者と言われるダシール・ハメットの第二作。デビュー作「血の収穫」同様、コンチネンタル探偵社の名無しの探偵(オプ)が主人公だが、デビュー作に登場した探偵とは体格も性格も違っているように思う。加えて…

最後の1行の衝撃

意外なことだが、ロアルド・ダールの作品を紹介するのは初めて。本書も高校生の頃に一度読んで、衝撃を受けた記憶がある。本書の中の「南から来た男」などは、細かな点まで覚えていた。実は、本書は50年前に読んだものとは違う新訳。訳者の田口俊樹は解説の…

死刑を巡る攻防の歴史

本書は、以前「Wの悲劇」を紹介した夏樹静子の日本の裁判史。<オール読物>などに掲載された12の小編を、2010年に単行本化したものである。先月森炎著「死刑と正義」で見たように、罪状は明白でも極刑を選ぶべきかについては、いつの時代も判断に迷う。こ…

祝!150話達成

このDVDは、ご存じ「ネイビー犯罪捜査班:NCIS」のシーズン7。これまでにも増してストーリーのバリエーションが増え、視聴者を楽しませてくれる。登場人物にもいろいろ変化や成長、過去のエピソードの紹介があって、興味深い。特に150話目にあたる「親子の…