新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

尾張藩下屋敷のからくり

これまで「11枚のトランプ」「亜愛一郎の狼狽」などを紹介している泡坂妻夫の、時代小説が本書。「亜智一郎の恐慌」は幕末ものの短編集だったが、本書は安政時代の江戸を舞台にした長編冒険小説だ。 徳川御三家筆頭尾張62万石、その下屋敷が江戸の西北、今で…

"Techplomacy"を進めるには

2020年発表の本書を、今月来日したMicrosoftの友人から貰った。同社はOSというソフトウエアでPC業界を席巻しながら、スマホではAppleに敗れた。また米国政府と独禁法で争い、法律や常識の異なる各国との軋轢も経験した企業だ。今も世界を支配しようとする凶…

最も優れた戦略家の警告

米中衝突の可能性が高まる中、2021年に出版された軍事スリラーが本書。作者は海兵隊特殊部隊出身の作家エリオット・アッカーマンと現役時代「最も優れた戦略家」と讃えられたジェイムズ・スタヴリディス提督。恐らくスタヴリディス提督が構想と監修を担当し…

欧米ミステリーの紹介では?

以前、戦後ミステリーの大家のひとり高木彬光のデビュー作「刺青殺人事件」を紹介した。作者は戦前からのミステリーマニア、恐らく原語でヴァン・ダインやクイーン、クリスティらの諸作品を読んでいたのだろう。冶金工学の技術者で中島飛行機に勤めていたの…

経済社会のエンジン・・・のはず

2017年発表の本書は、一橋大学名誉教授で経済学者の関満博氏の現代中小企業論。日本企業のうち14.7%が中堅企業、85%が零細含む中小企業であって、それらの企業について改めて勉強するために買ってきたもの。 著者は「45年ほど地域経済と中小企業を見てきた…

無政府共産主義者たちの死刑

これまで夏樹静子「裁判百年史ものがたり」などで、死刑の実態を見てきたが、その中でも一度に12人を処刑したという<大逆事件>について、もっと詳しく知りたいと思って買ってきたのが本書。直木賞(復讐するは我にあり)作家の佐木隆三が、膨大な当時の記…

大都会のボランティア警官

本書(1975年発表)は、「87分署もの」などで知られるエド・マクベインの「ノン・シリーズ」の1作。先月西海岸を舞台にした「ホープ弁護士もの」の「金髪女」を紹介しているが、本書はアイソラではない架空都市での引退警官の活躍を描いたものだ。都市は多…

忍耐強いスペンサー

ロバート・B・パーカーの「スペンサーシリーズ」も本棚に残っているのは本書(2009年発表)を含めて2冊だけ。作者は2010年に急逝し、40冊のスペンサーものが遺された。この後には2冊しか発表されておらず、そのうちの1冊「盗まれた貴婦人」は僕が手に入れる…

20世紀の4大兵器革命

本書は先月「戦争学」を紹介した、松村劭元陸将補の前著の続編。古代から2,600年間におよぶ戦史を紹介した前著と違い、世紀末の2000年に発表された20世紀の「戦闘教義」を網羅した書である。 総力戦下の国家の国力8要素と、戦いの9原則が前著で紹介されて…

大英帝国海軍の強敵

第二次世界大戦では多くの主力艦(戦艦・巡洋戦艦・航空母艦)が沈んだが、その多くは太平洋でのことである。早々に降伏してしまったフランス海軍や、戦艦4隻が建造中止になったソ連海軍、大型艦は逃げ惑うだけのイタリア海軍、精強だがわずかな艦艇しか就…

<子ども家庭庁>が参照すべき本

先月、大竹文雄教授の「競争社会の歩き方」を紹介した。僕にとって初耳の学問、行動経済学の入門書だった。2019年発表の本書は、その大竹教授が推薦する東大経済学部政策評価研究教育センター長山口慎太郎教授の著作。行動経済学を家庭(結婚・出産・子育て…

時代小説が歪めた(?)歴史

昨日、歴史小説家中村彰彦著「幕末を読み直す」を紹介した。歴史小説と時代小説の比較(線引き?)はとても興味深かったが、タイトルにある「幕末」の扱いが思ったより少なかったので、本棚の奥から本書を引っ張り出してきた。2005年発表の書で、著者は東急…

歴史・歴史小説・時代小説

本書は、歴史作家中村彰彦のエッセイ集。作者は幕末会津藩の猛将佐川官兵衛の一代記「鬼官兵衛烈風録」でデビューした人。栃木県の出身で、近県のせいだろうか会津を舞台にした作品が多いという。 作者によれば、歴史小説を書くには多くの資料にあたり下調べ…

AI探偵「ゼニガタ」

本書は1984年に「小説現代」に連載された、内田康夫の短編を8編集めたもの。主人公は世界に一台しかない犯罪捜査用のパソコン(今様に行けばAI)である「ゼニガタ」と、それを使う探偵事務所長鴨田英作である。 作者は1980年に「死者の木霊」でデビューする…

時間を操る回転木馬

本書(1962年発表)以前「火星年代記」を紹介した、レイ・ブラッドベリの長編ファンタジー。本国では根強い人気のある作家だが、短編集含め8冊しか作品のない寡作家でもある。「火星・・・」がデビュー作で、本書は7作目にあたる。 SF・ファンタジーと一括し…

8人の青年たちの秘密

1993年発表の本書は、ポーラ・ゴズリングの第11作。「モンキーパズル」あたりからレギュラー探偵を登場させている作者は、前作「ブラックウォーター湾の殺人」でこれまでのストラーカー&ケイトに加えて、ブラックウォーター郡の若き三世保安官マット・ゲイ…

これも総裁選向けの出版

本書は、自民党総裁選を前にした2021年9月に出版されたもの。事実上、河野太郎候補の政権構想といっていい。DCのジョージタウン大学で学んだことや、父親洋平氏への生体肝移植のことが前半1/3を占めているが、残りは以下の点で政策論を述べている。 ・外交…

麻薬組織とタリバンが組んだ?

いろいろな共著者を得て、スパイ&軍事スリラーを書き続けてきたトム・クランシーは、2013年に亡くなった。最後の共著者は「グレイマンもの」のマーク・グリーニーだったが、その直前にピーター・テレップと発表した(2011年)のが本書。主人公は、<統合タ…

日本でのプラットフォーマー(PF)規制論

2021年発表の本書は、読売新聞社でIT問題を担当、情報セキュリティ大学院大学で2019年には修士号もとった記者若江雅子氏の「PF規制に霞ヶ関は何をしたのか」論。公取・総務省・経産省・個人情報保護委員会や関係する法曹界・学界の人物が多く登場するが、半…

新興国・小国から見た中国

2021年発表の本書は、ルポライター安田峰俊氏が(「COVID-19」禍で海外取材が出来なくなって)これまでの取材データや海外ネットワークを使ってまとめたもの。冒頭各国の対中国感情の係数が示してある。日本は尖閣事件などあって2010年代初頭から係数が悪化…

現代イタリア政界の妖怪

先月イタリア総選挙が行われ、かつてムッソリーニに傾倒していたという女性党首の極右政党が第一党になった。現代イタリア政界では複数党の連立が当たり前で、組閣に1~2ヵ月はかかるらしい。連立政権の一角に、元首相のベルルスコーニ氏の名前があった。2…

選挙と建設業界の深い闇

1990年発表の本書は、久しぶりの「V・I・ウォーショースキーもの」。シカゴの女探偵V・Iことヴィクの正義感あふれるゆえの苦闘を、イリノイ州在住の作家サラ・パレツキーが書き続ける第6作である。毎回背景となる舞台を変えているこの作品群、今回の舞台は建設…

金沢・東京「二重生活」の夫

本書は1959年に発表された、巨匠松本清張の代表作である。物語の大半を占める金沢を中心とした石川県の冬の風情が、陰鬱な雰囲気を倍増させている。26歳のOL禎子は、勧める人があって10歳年上の鵜原憲一と見合いをし、結婚した。当時としてはお互い、やや遅…

マクロに捉えた47都道府県の産業力

2018年発表の本書は、帝国データバンクと読売新聞の中村記者による、「COVID-19」禍前の日本の産業界(景気)地図。最近デジタル政策もサイバーセキュリティ対策も東京視点だけでは不十分だと痛感させられているので、何かの参考になればと買ってきた。「ご…

学生寮の盗難事件から・・・

1955年発表の本書は、女王アガサ・クリスティの「ポワロもの」。第二次世界大戦後10年近く経ち、ロンドンには世界中から留学生がやってきている。よく貴族の館に大陸からの使用人(執事・メイド・コック・運転手・庭師等)が雇われている「多国籍環境」での…

鉄道院周遊俊妙居士

今日は鉄道の日(毎年10/14)である。明治22年に鉄道省によって制定された記念日だ。これまで多くの「鉄道愛」の書を紹介してきた宮脇俊三氏は、2003年に亡くなっている。享年76歳、戒名は「鉄道院周遊俊妙居士」という。本書は作者が晩年に情熱を燃やした「…

闘えるようにするには

2日間に渡り紹介した書で、日本の防衛力の問題が明白になった。市民が防衛に十分な関心を持たないので、政治も行政も本気にならない。闘わないことを前提として、自衛隊は活動してきた。一部メディアや野党の反対コールに、政府全体が及び腰だ。それではど…

闘わなくてもいい軍隊ゆえ

昨日「防衛事務次官冷や汗日記」を紹介した。37年間防衛庁(後に省)の内局に努め、各幕(現場)と官邸・政治家や財務省などと「板挟み」になってきた黒木氏の経験談は、それなりの重みがあった。どの先進国にも、軍の暴走を防ぐ<シビリアンコントロール>…

シビリアンコントロールの37年

本書は「南スーダンPKO日報問題」で防衛事務次官を退いた黒江哲郎氏が、37年間の防衛省(庁)での思い出をつづった回顧録。2020年末から元防衛官僚を中心に作るサイト<市ヶ谷論壇>に掲載された記事を、2022年に書籍化したもの。基本的に防衛省もしくは中央…

巨大利権を持つNPO

本書は、ちょうど「東京オリ/パラ」の1年延期が決まった、2020年5月に発表されたもの。著者の後藤逸郎氏は、毎日新聞で<週刊エコノミスト>編集などに携わったジャーナリスト。「オリンピック・マネー」という題名通り、このイベントにまつわるカネ・利…