新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

戦闘級のチャンピオン

 シミュレーション・ウォー・ゲームには、4つのクラス分けがある。ゲームをする人から見ると、
 
 ・戦略級 国家指導者の視点
   ⇒ 外交戦、戦争経済運営、国民士気の鼓舞等、1コマは軍レベル
 ・作戦級 軍司令官の視点
   ⇒ 戦力展開、兵站、作戦目標へのアプローチ等、1コマは師団レベル
 ・戦術級 戦闘指揮官の視点
   ⇒ 火力の集中、移動、敵の捜索、兵器の有効活用等、1コマは小隊やAFV
 ・戦闘級 戦う個人の視点
   ⇒ 状況判断、武器の使用、体力の維持等、1コマは1人の人間や武器
 
 のように分けることができる。

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 誤解を恐れずに言えば、シミュレーション・ウォー・ゲームの王道は作戦級だろう。出版された数も多い。それに比べて戦闘級はある意味、キワモノのように思われているかもしれない。古代の剣闘士を扱った "Gladiator" では、投げ網などの武器はもちろん、剣闘士の腕や足までコマになっている。西部劇の世界を描いた "Gunsulinger" では、弾を込める・ハンマーをおこす・狙いをつけるなどの操作までルール化されている。
 
 いくつかやってみたことがあるが、とても時間がかかり、映画のようなスピード感が得られない。これがメジャーになれなかった理由ではなかろうか。
 
 戦争や戦闘を扱った映画やTVドラマも、上記4分類にあてはめることができる。映画 "The Longest Day" や "A Bridge Too Far" は作戦級、TVドラマ "Combat" は戦術級から戦闘級だろう。
 
 小説も同様に考えると、トム・クランシーの "The Hunt of Red-October" は作戦級なのだろう。そのトム・クランシーが最後の共著者として選んだのが、マーク・グリーニーである。グリーニーには「グレイマン(目立たない男」シリーズという著書がある。これが非常に迫力のある戦闘級小説なのだ。
 
 このクラスの小説といえば、アンディ・マグナブ、クリス・ライアンらが有名だが、彼らは特殊部隊の経験者である。スティーブン・ハンター(極大射程などボブ・リー・スワガーシリーズの著者)も軍歴はある。しかし、グリーニーには軍歴もないようなのに、よくここまで迫力のある表現ができるな、と感心してしまう。クランシー亡き後も、関連シリーズを書いてくれているようなので、期待している。