新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

湾岸戦争の後で

 学生時代にスーダンからの留学生と交流し、社会人となってから何度かアメリカ西海岸への出張は経験したものの、基本的に「まるっきりドメスティック」な生活を僕は送っていた。歴史(戦争史)は好きだったので、本も読んだしゲームもした。それでも、現代の国際政治に興味はなかった。

 
 そんなことに少しは目を向けるきっかけになったのが、「湾岸戦争」とその報道だったことは以前紹介した。TV朝日の「サンデープロジェクト」は欠かさず見ていたし、類似の報道番組も(似たようなことをいっているにも関わらず)休日午前中のTVつけっぱなし習慣があるので見ていた。

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 「サンデープロジェクト」は司会のジャーナリスト田原総一朗の視点も面白かったが、レギュラーコメンテーターで存在感を示していたのが京都大学高坂正堯教授。好々爺のような外見で関西弁の声音もゆったりしているが、論調そのものは結構どぎつい。現実的な、時にはドライなコメントが印象的だった。
 
 ある日古書店で見つけたのが、この本「世界地図の中で考える」。後に聞いたところでは、京都大学法学部の高坂ゼミというのは、タカ派の論客を多く輩出したところらしい。ゼミ生だったかどうかわからないが、前原誠二議員(民進党)、山田宏議員(自民党)にも多大の影響を与えた人だと後に聞いた。
 
 本書は1968年の発表だが、国際社会の問題の多くは変わっていないことがよくわかる。最終章「世界化時代の危機」では、次の2点が挙げられている。
 
 ・南(発展途上国)の食糧危機
 ・北(先進国)の狂信と懐疑主義
 
 あとがきには「文明そのものが、光の面と闇の面を持っている」とあって、その両面が分かちがたいことや、どこが光か闇かすらわかないことがあると締めくくっている。高坂先生が、1995年62歳という若さで亡くなったのは誠に残念である。これは、後年僕を「英語が下手にもかかわらず、無謀にも海外へ出かけていく」気にさせた、人生を変えた本である。