新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

なぜ「太平記」なのか?

池波正太郎著「真田太平記」を読了した。週刊誌に9年間連載された大作である。最後の12巻は「霧の峰」で、大阪夏の陣の後、徳川方大名として生き残った真田信之が松代に転封されるまでを描いている。昔NHK大河ドラマ化された時も、夏の陣で真田幸村こと信繁が目標たる「家康の首」にあと一歩と迫りながら戦死するまでを描いていたように思う。
 
 以前NHK大河ドラマで放映された「真田丸」で真田昌幸を演じている草刈正雄が、当時は幸村を演じていたのは奇縁かもしれない。まあ昌幸も幸村も小柄だったと記録にあり、草刈さんのような大柄な人が演じるのは原作を読んだものからみると違和感がないでもない。

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 それはともかく真田昌幸・信之・幸村の時代を描こうとすれば、
 
◆第一次上田合戦:3人で徳川勢をあしらう。
◆第二次上田合戦:昌幸・幸村が徳川秀忠を釘付け
         にして関ケ原に向かわせなかった。
大阪冬の陣・夏の陣:幸村対徳川の大軍
 
 が絵になるシーンだ。クライマックスは、夏の陣にもってくるのが普通だろう。
 
 第11巻「大阪夏の陣」を読んで、どうしてもう1冊あるのだろうといぶかった。その後は、真田信之徳川秀忠とその取り巻きの策謀から、真田家をどう存続させるかという話しか残っていない。現に第12巻はそういう話が主軸になり、草の者の活躍や小野のお通の心意気などが語られるが、大立ち回りはない。
 
 しかし、読了して疑問は解けた。真田信之が知略と仁徳をもって真田家を安堵させる結末が、温かく描かれていた。つまり、最後は太平になったということが「真田太平記」という題名の意味なのだろう。一番の大立ち回りで終わりたい、という僕の考えは浅はかでした。