新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「String Bag」の戦果

 マレー沖海戦で、海軍航空隊の「空飛ぶ駆逐艦」である陸上攻撃機が、イギリスの新鋭戦艦・巡洋戦艦を仕留めた話を以前ご紹介した。この時、英軍側は雷撃機の速度を見誤って迎撃に失敗したという。つまり、想定の倍くらいの速度で襲い掛かってくる敵機への対空砲火を誤ったらしい。

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 その理由は、自国の雷撃機を見慣れていたからである。それが「ソードフィッシュ」である。
 
◆Fairey Swordfish 艦上攻撃機
 採用:1935年
 乗員:3名
 最高速度:222km/時
 積載量:最大680kg(魚雷、爆雷、250ポンド爆弾2発、
      500ポンド爆弾2発、60ポンド ロケット弾8発など)
 
 参考までに日本海軍の97式艦上攻撃機と比較してみよう。
 
◇97式艦上攻撃機
 採用:1937年
 乗員:3名
 最高速度:381km/時
 積載量:最大800kg(魚雷、800kg爆弾、250kg爆弾2発、
      30kg爆弾6発など)
 
 制式採用は2年しか違わないが、速度の違いは明らかである。これが、雷撃機に対する目測の誤りにつながったのだろう。
 
 見た目にはいかにも古く、複葉でしかも帆布張りである。英軍兵士は愛着を込めて"String Bag" と呼んだ。お買い物袋のように、空中戦以外の普段使いならなんでもできる機体だったからである。本業の雷撃、水平爆撃はもちろん、小型爆弾を積んでの対潜哨戒、ロケット弾を積んでの地上支援など、速度が遅いのを活かして「遅い相手」なら、なんでも引き受けることができた。
 
 1940年、空母イラストリアスを発した21機のソードフィッシュが、南イタリアの軍港タラントを空襲した。新鋭戦艦リットリオをはじめ、3隻の戦艦が大損害を受けたイタリア海軍の活動は、以後低調になる。犠牲は2機だけだった。ソードフィッシュは第二次大戦を通じて活躍し、ドイツの新鋭戦艦ビスマルクの撃沈にも関与している。
 
 イギリス人には妙なこだわりがあって、後継機のアルバコア(これは欠陥機ともいう)や米軍供与のアベンジャーが配備されるようになっても、お買い物袋を使い続けた。イギリスの航空戦力にはわけのわからない機体が多い、いずれご紹介することになるだろう。
 
 もうひとつ参考までに、画像にある艦船についても触れておこう。タラントで大破着底したコンテ・デ・カブールやカイロ・ドゥリオに替わって就役したアンデレア・ドリアではないかと思う。これも古い艦だが、日本の旧式戦艦同様近代改装をして参戦している。このようなシーンがあったかどうかは不明だが、旧式兵器対決は、イギリス軍の圧勝に終わったと思われる。
 
アンドレア・ドリア(カイロ・ドゥリオ級戦艦)
 竣工:1915年、1940年に改装後再就役
 主砲:32cm砲10門
 速力:27ノット
 排水量:29,000トン