新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「ふ」号兵器の後継者

 昨年初めて行った国イスラエル、建国以来周辺国からの有形無形の圧力を受けながらしぶとく生き延びている国であることを、現地で直接感じている。トランプ先生がユダヤ教徒である娘婿への配慮か、福音派の票が欲しかったせいか、イスラエルに傾倒してアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムへ移した。

 
 エルサレムを首都にすることを悲願にしているアラブの人たちは当然激高し、緊張は一気に高まった。特にエジプト寄りの地中海沿岸「ガザ地区」では衝突が繰り返されている。さらにトランプ政権はパレスチナへの支援を止め、ゴラン高原の領有を認めるなどネタニヤフ政権に入れ込んでいる。
 
 装備も訓練も行き届いたイスラエル軍に対し、闘志以外の資源の少ないアラブ(パレスチナ)側は、手元にあるもの全てを兵器として使わざるを得ない。その中に、燃える風船というものがあるとの報道があった。風船に線香を使った導火線、燃えた布をつけてイスラエル側に放つわけだ。簡素ではあるが、大量に放たれれば無視できない「焼夷弾」である。

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 第二次世界大戦、国力から見てとても勝てない相手英米にケンカを売った日本も、ガザの人たちと同じようなものだったかもしれない。和紙やこんにゃく(糊として使う)まで徴発して、日本列島から直接米国本土を狙う「風船爆弾」の開発・生産に乗り出した。暗号名を「ふ号」兵器という。
 
 直径10mという大型の風船に、150kg爆弾と2個の焼夷弾を吊るして千葉の海岸から上空に上げ、ジェット気流に乗せて運ぼうというわけ。現在、羽田/成田からシアトルあたりへ向かう定期便のルートに似ている。約1万個が放たれたらしいが、モンタナ州で何箇所かの山火事を起こし、遠足に来ていた児童数人を吹き飛ばした以上の戦果(?)は認められていない。
 
 しかし本書のコメントにあるように、細菌兵器や化学兵器を搭載していたら米国に大きな被害を与えた可能性はある。万一ガザのゲリラがそんな大量破壊兵器を手にしたら、イスラエルにとって脅威は計り知れずガザ全土を焼き尽くすくらいの報復をする可能性もある。また「核放棄」を言っている半島の付け根の国があり、それすらも怪しいのだが、このような(核ミサイルに比べれば)安価な兵器を作る可能性は否定できない。かの国の位置は、日本の風上に当るのですから。