神聖ローマ帝国第18代大公殿下マルコ・リンゲが、ハリケーン荒れ狂うバハマ諸島で誘拐された技術者の奪還(か暗殺)を図る物語。アメリカ合衆国の裏庭ともいえるカリブ海に、キューバ革命(~1959年)キューバ危機(1963年)が起きて不安定化していたころの作品である。
アメリカ軍の暗号技術を一手に握っていた青年技術者が、バハマで水死体となって発見される。しかし身元確認が不十分であり、もし死体が身代わりで本人が生きてソ連の手に渡ったら一大事(真珠湾攻撃並みのインパクト、とCIA高官が言う)である。1万ドルで情報を売りたいと言ってくる人物がいて、マルコはCIAの代理人として現地に赴く。報酬は5万ドル、例によって城の修復費で消えてしまうのだが、今彼には必要なお金である。
護衛に海兵隊1個大隊をねだるのだが、現地協力員1名だけという寂しさ。しかも協力員は、本業が鉛管工というパート工作員。バハマ諸島が政治的に不安定で、アメリカが表だって動けない事情がある。そんなところに重要人物を、休暇とはいえ出国させる米軍もどうかしている。
案の定ソ連の大物スパイがからんでいて、青年技術者の身柄を確保し中立地帯のバハマからソ連圏であるキューバに連れ去る機会をうかがっている。現地に乗り込んだマルコは、男殺しのプロであるKGBの美人スパイの誘いにのってトルコ風呂に入り、閉じ込められてあわや燻製にされそうになる。
マルコはなんとかソ連側の狙いを突き止めるが、目標は厳重に守られていて手が出せない。再び「海兵隊1個大隊」を要求するのだが、結局いつものゴリラ2頭が派遣されてきただけ。くだんの美女スパイは捕えたものの、青年技術者の若妻もやってきて、いつものように美女の間で大暴れかと思いきや、その青年技術者がLGBTだったものだからゲイ・バーに潜入せざるを得なくなる。このあたり、ドタバタ活劇のようなシーンが続く。回を追うごとに得意の記憶能力を発揮するシーンが少なくなるのだが、奪還もしくは暗殺を命じられてどうしても自ら手を下して殺したくないマルコの心情にリアリティがある。そこがゴルゴ13との違いである。