新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

戦隊指令、アマンダ・ギャレット

 「現代のホーンブロワー」アマンダ・ギャレット、三度目の登場である。アルゼンチン空・海軍を単身引き受けて戦い、中国軍の核攻撃を阻止するため長江を遡上したステルス艦「カニンガム」は、中国軍との戦闘で傷つき兵装強化の改装も含めてドック入りしている。しかし艦長アマンダ・ギャレット中佐には、ドック入りしている暇は無かった。
 
 今度の舞台は西アフリカ。南アフリカ共和国を除きアフリカ大陸の中でも比較的早く発展した国が、リベリアシエラレオネである。しかし近年は両国とも衰退して、政情不安定な状況が続いている。本書の設定では、リベリアに有能な軍人政治家があらわれ独裁体制を固めるとともに、シエラレオネを強引に合併「西アフリカ連邦」を結成して、地域を不安定な状況に陥れる。

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 西アフリカ連邦は次にギニアの狙いをつけ、軍事侵攻をちらつかせながら吸収合併を図ろうとする。そこで国連安全保障理事会がこの動きを抑止するような制裁議論をするのだが、拒否権を発動する国が出てきて上手くいかない。
 
 まあ半島の付け根の国に対して現実の世界でも、同様のことが起きているわけで説得力がある。そこで多国籍軍が結成され、小規模な艦隊と水上基地「フローター1」を派遣することになった。ギニア島への侵攻を防ぐギリギリの戦力しか認められなかったのである。
 
 中心となる米軍の戦力は基地のほか、高速哨戒艇2隻、ミサイルホーバークラフト3隻にすぎない。このホーバークラフト、多様な兵装搭載が可能でステルス性を持ち、70ノットの速力を誇る。それでも乗員9名程度の小艦艇がたった3隻である。旧式艦や武装モーターボートばかりではあるが圧倒的な数を持つ「西アフリカ連合」艦隊をこれで抑えるには、優秀な司令官が必要と考えたマッキンタイア提督はギャレット艦長を大佐に昇進させ、戦隊司令官に任ずる。
 
 かつての部下クリスチーナ・レンディーノ少佐と提督以外は初顔合わせの仲間たち、共同戦線を張る海兵隊の大尉とも初対面だ。最初はホーバークラフトの特性や戦況を見極めていたギャレット司令だが、やがて国連の想定を超える攻勢に転じる。
 
 100隻からの武装モーターボートを罠にかけ、港に逃げ込ませたところを港ごと吹き飛ばしてしまう前半のクライマックスは圧巻である。3隻のホーバークラフトに目いっぱい対地対艦ミサイルを搭載、一斉射撃で500発を撃ち込むのだ。西アフリカ連邦の独裁者は、ギャレット大佐の豹のように狡猾な敵だと感じ警戒を始めるのだが、「見敵必戦」をモットーにするギャレット戦隊に翻弄される。
 
 35歳、女ざかりのギャレット大佐の魅力はもちろんだが、30歳を越えたばかりのクリスチーナ・レンディーノ少佐もいい味を出している。ギャレット大佐を叱ることのできる唯一の部下で、IQ180の頭脳が素早く状況を把握してキーとなる作戦・戦術を編み出す。ギャレットものはあと2冊買ってあります。いつ読もうか、今から楽しみです。