新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

.25口径自動拳銃

 007カジノロワイヤルを読んで、.25口径自動拳銃のグリップを骨組みだけにしてテープを巻いたものなら正装していても携行して目立たないという記述があったことは何日か前に書いた。恐らくは、ベビー・ブローニングのようなものだったろう。

 

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◆FNブローニング・ベビー
 口径 .25口径(1/4インチということ)
 銃身長 53.6mm
 弾薬 .25ACP弾
 作動方式 ストレートブローバック・ストライカー方式
 全長 104mm
 重量 275g
 製造期間 1931年~
 
 この銃そのものだったかは記述がないが、エラリー・クイーンの国名シリーズにこの手の凶器が出てくる作品があった。
 
 それが本書「アメリカ銃の秘密」(創元版ではアメリカ銃の謎となっている)である。国名シリーズ最高傑作と紹介した「エジプト十字架の謎」に続く、1933年の発表である。
 
 ニューヨークのコロシアムでロデオが開催され、銀幕(映画の事)スターが先頭を切って騎乗疾走している時に射殺される。40人あまりのロデオ騎手はいずれも銃を携帯し、映画のフィルムも射殺の瞬間を捉えていた。容疑者(目撃したクイーン親子を含めて)は2万人。目の前で起きた殺人事件に、クイーン親子が挑むというもの。
 
 中学生のころ読んで、映画のフィルムにトリックがあると考えて「読者への挑戦」に敗れた記憶がある。そのころは銃器に関する知識が十分ではなかったせいだと、後年いいわけをしている。カギは凶器が.25口径の自動拳銃ということにあった。ロデオの騎手が持っているのは、いかにもアメリカを象徴する「コルト・シングルアクション・アーミー」だったろう。
 
◆コルト・シングルアクション・アーミー
 口径 .45口径
 銃身長 140mm
 弾薬 .45ロングコルト弾
 作動方式 シングルアクション(撃鉄を手で起こして弾倉が回転する方式)
 全長 276mm
 重量 1,150g
 
 広いロデオ会場で、疾走する標的に対して1発で急所を打ち抜くことは至難の業である。それをこの犯人は2度小型拳銃でやってのける。ゴルゴ13でも可能かどうか、わからない。凶器として.25口径自動拳銃というのはいかにも不釣り合いだった。ここは作者が相当無理をしたところだろう。コルト・シングルアクション・アーミーこそ、西部開拓の銃。象徴的な意味でも実効的な意味でも、こちらこそ凶器にふさわしかった。作者がそうできなかったところに、謎を解くカギがあった。