新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

名将リー将軍の銅像

 南北戦争というのは、日本人にとってはなじみの薄い事件である。英語名称は「Civil War」というが、これは内戦のことである。こういうタイトルのゲームがあって、買ってはきたのだがまともにプレイできなかった。ゲームシステムそのものが難しいというよりも、コマ(将軍・騎兵・砲兵・歩兵等)に親しみが湧かなかったせいだろう。同じ様なシステムのナポレオニックゲームは、ちゃんとできたのだから。


 しかし米国人にとっては大変な歴史である。70万~90万人が死んだと伝えられる大戦争なのだから。面白いのは、北軍アメリカ合衆国)の首都ワシントンDCと、南軍(アメリカ連合国)の首都リッチモンドが100kmほどしか離れていないこと。かくも広大な北アメリカ大陸で、首都同士は鼻を突き合わせていたわけだ。

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 リッチモンドのあるバージニア州がすでに南軍の領域、ワシントンDCへ行くときに良く使うダレス空港も、よりDC中央部に近いと好んでいるレーガン空港もバージニア州にある。その狭いエリアで、両軍(北軍Max 220万人、南軍Max 100万人)が戦ったわけだ。その中で何人か有名な将軍が出た、南軍きっての名将と言われたのが、ロバート・E・リー将軍
 
 彼の銅像が、バージニア州シャーロッツビルにある。今回この街で白人至上主義団体とそれに反対する団体が衝突したのは、リー将軍銅像撤去問題を巡ってのことらしい。リー将軍が奴隷農場の主だったから、その銅像を撤去せよという勢力があり、それに反対した白人至上主義者の勢力が集まってきて示威行為をしたのがきっかけと言われている。

 確かに南軍は敗れたのだが、これは元々北軍の方が経済的にも戦力的にも優勢だったからである。綿花などを(奴隷の)手工業で産業にしていた南部より、重工業が盛んな北部の方が明らかに優位にあった。その上、戦争指揮官リンカーンは「奴隷解放」という武器を使って南部諸州の産業に脅威を与え、兵力としての脱走奴隷なども獲得した。これではいかに勇将であるリー将軍も、形成を逆転させることはできない。

 トランプ大統領は「このままだと、初代大統領ワシントンの銅像も(奴隷荘園主だったという理由で)撤去することになるぞ」と叫んだが、ある意味正しい発言だと思う。白人至上主義団体の言動は論外だが、リー将軍銅像撤去を求める方もどうかと思う。だからトランプ大統領の「どっちも悪いところがあった」的な発言にも違和感はない。しかし米国のメディアや識者・政治家たちはこれに激しく反発した。

 奴隷制度は良くないことだとは思う。しかし産業革命以前は人間の労働力が主エネルギーだったのだから、無理からぬ部分もあったとも思う。問題はこれを歴史とせず、奴隷だった人たちの子孫まで色メガネで見ることである。白人至上主義者には、そういう言動が見られる。そこをわきまえた歴史家の立場ならば、名将リー将軍銅像にまでやつあたりすることは無いと思うのですがね。あ、隣国にもそういう(やつあたり)大統領がいたような気がします。