新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

B-25の奇襲低空爆撃行

 ギャビン・ライアルはマクシム少佐シリーズを書く前に、単発ものを7作書いた。本書もそのうちの1冊、1966年の発表である。元戦闘機パイロットであるキース・カーは、カリブ海で細々と運送業を営んでいる。朝鮮戦争では3機の敵機を撃墜したベテランだが、平和な時代に起用に生きる能力は少ない。愛機は、中古のダブ。


         f:id:nicky-akira:20190421110056p:plain

 
デ・ハビランドDH.104ダブ
 ・全長 12.1m、全幅 17.4m、全高 4.1m
 ・巡航速度 240km/h
 ・乗員 2名、乗客 最大11名
 
 彼はカリブの(架空の)小国レプブリカ・リブラ空軍にいる元戦友から、同空軍の主力戦闘爆撃機パイロットに高給で誘われるが断っている。同国では革命派の武装勢力との紛争が激化し、強力な戦力としてヴァンパイアを1ダース購入・運用し始めていたのだ。
 
デ・ハビランドヴァンパイア
 ・運用開始 1945年
 ・全長 9.4m、全幅 11.6m、全高 2.7m
 ・最大速度 861km/h
 ・固定武装 20mm機関砲×4
 
 その後同国付近を飛行していたカーは、威嚇をかけてきたジェット戦闘機ヴァンパイアを低空に誘い込み機動を仕掛けてこれを「撃墜」する。その結果、カーはリブラに拘留されダブも取り上げられてしまう。そんな彼に高名な西部劇俳優を含む映画ロケ隊が仕事を依頼してきた。最初は空中からの撮影の仕事だったが、実はリブラの革命派を支援しようという企みだった。撮影用として俳優たちが調達したのは、第二次世界大戦時代の爆撃機B-25だった。
 
◆B-25ミッチェル双発爆撃機
 ・運用開始 1941年
 ・全長 16.1m、全幅 20.5m、全高 4.8m
 ・最大離陸重量 19,000kg
 ・最大速度 442km/h、巡航速度 370km/h
 ・作戦行動半径 2,170km
 ・乗員 6名
 ・固定武装 12.7mm機銃×12門
 
 B-25はより高速だが航続距離の短いB-26とほぼ同時に実戦配備されたが、後者は欧州戦線・前者は太平洋戦線に優先的に配備された。戦史マニアには、ミッドウェイ海戦のきっかけを作った「ドゥーリトル東京空襲」の主役として知られている。50口径ブローニング機銃12門の破壊力はすさまじく、太平洋戦争ではシーレーン攻撃に使用され多くの日本船が犠牲になった。
 
 とはいえ戦後20年経った老朽機。方々にガタが来ていて、飛ぶのが奇跡のような機体である。カーはこれでリブラ空軍の基地を奇襲、滑走路上のヴァンパイアを破壊する作戦を行うことになる。しかし手配した爆薬は届かず、結局漁網にくるんだレンガを滑走路に叩きつけて戦闘機を(一時的にせよ)無力化するという無謀な攻撃をする羽目に。
 
 カーの、B-25に対する「愛」さえ感じさせる整備の過程が詳しい。他にもクラップスのイカサマダイスや、散弾を撃つ拳銃「スネークガン」など小物が面白い。結論として非常に面白い航空冒険小説なのだが、邦訳タイトルの付け方には異論がある。映画ロケ隊の陰謀を背景しているから「本番台本」なのだろうが、もう少し戦闘・戦術的な題名の方が良かったのではないでしょうか。