新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

スペンサーが愛を取り戻す話

 このシリーズ第二作の「誘拐」以降、スペンサーの恋人として読者に紹介されてきた心理カウンセラースーザン・シルヴァーマンは、作を重ねるごとに存在感を増してスペンサーの生活に入り込んできた。ところが10作目の「拡がる環」では、大学院で心理学を学ぶプロセスとしてワシントンDCでのインターンに出かけてしまう。

 

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 スペンサーは事件の捜査も兼ねてワシントンDCに出かけ、ひとときのデートを楽しんだりしていた。そして11作目「告別」の冒頭、ハーヴァード大学院の卒業式のシーンで、スペンサーは「好きな人ができたから、西海岸で暮らす」と告げられる。
 
 スーザンが去ったスペンサーはたちまち老け込み、老眼鏡を持ち出す始末。事件の捜査にもいまいち身が入らず、とんちんかんなことばかりして、最後は油断して拳銃弾を2発喰らって死にかける。急を聞いて駆け付けた相棒ホークの活躍で病院に担ぎ込まれて一命をとりとめるのだが、時々連絡してくるスーザンにはそれを告げていない。
 
 本書は「告別」に続く12作目、「好きな人」だったはずのラッセル・コスティギャンに軟禁されてしまったスーザンを、蘇ったスペンサーがホークの助けを借りて救出する話だ。
 
 しかしラッセルの父親は大立者の武器商人、武器だけでなく傭兵までイデオロギーに関係なく売りつける男で、強大な力を持っている。通常なら(いくらタフガイでも)2人の手におえる相手ではないのだが、スペンサーとホークは軽口をたたきながらコスティギャン家を小突きまわす。
 
 もともと私立探偵というより軍人くずれのような荒っぽさを持つスペンサーだが、本書では次々と相手を倒してゆく。コスティギャンの組織壊滅を狙う米国政府の支援も得て、スペンサーはコスティギャン家の要塞に潜入する。
 
 まあ007ばりの活劇小説と思えば面白く読める部分もあるのですが、スペンサーとラッセルの間で揺れるスーザンの「女ごごろ」がどうにも理解できませんでした。この3作を通して読まないといけないと思ってそうしたのですが、それでもわかりません。女ごごろと秋の空・・・でしょうか?