新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

仮装強襲コマンド母艦(後編)

 今回アマンダが指揮することになったのは、仮想強襲コマンド母艦「ギャラクシー・シェナンドー」号。戦艦アイオワに匹敵する66,000トンの排水量を持ち、かろうじて(拡張前の)パナマ運河を通過することができる。外観はバラ積貨物船に見えるが、内部には26機の有人ヘリと同数の無人機、小型潜航艇、水陸両用強襲車、対空ミサイル車などを隠している上に、攻撃/防御用のミサイルや砲といった兵装も持っている。

 

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 攻撃ヘリ「スピードコブラ」中隊を率いるのは、かつてステルス艦「カニンガム」のアマンダ艦長のもとでパイロットをしていたアーカディ中佐。下巻の表紙に描かれているスピードコブラ回転翼機でもあり固定翼機でもある、特異な構造をしている。これが通常の回転翼機には出せない速度や、固定翼機には出せない機動性を実現できた要因である。
 
 「シェナンドー」は搭載している航空戦力や特殊部隊を使って、反乱軍に包囲されたジャカルタアメリカ大使館から、ケディリ大統領や大使以下の大使館員、海兵隊員救助を支援する。救助そのものは他の艦や基地から飛来するオスプレイの仕事だが、その間強力な反乱軍の地上部隊を釘付けにすることがミッションだった。この戦闘シーンは実にリアルで、特に地下に隠されていた機甲部隊の奇襲をアーカディ中佐の無鉄砲な戦術で食い止める場面は感動的だ。
 
 ラストは反乱軍の指導者ケタマラン提督率いる大艦隊(ほぼインドネシア海軍の全力)を、シェナンドー単艦が引き受けて全滅させる大海戦である。島が点在する暗夜のリンガ海で、敵のレーダーを欺いて接近したシェナンドーはインドネシアフリゲート艦を衝角戦で沈める。現代のホーンブロワーとも言われるアマンダ・ギャレット大佐の面目躍如といったところである。
 
 J・H・コッブは米国海軍の家系に生まれ、海軍研究所で軍事史と軍事テクノロジーの研究者としてのキャリアを持っています。第一作「ステルス艦カニンガム」以降、巻を重ねるごとに徐々に現実には存在しない兵器を登場させることになるのですが、ベースにある考え方はしっかりしていてリアリティがあります。今回の活躍でアマンダの提督への昇進は間違いないでしょうから、第6作も読みたいですね。