新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

良いおまわりになるためのクイズ

 マイクル・Z・リューインのアルバート・サムスンシリーズを1冊を残して読んでしまったので、もうひとつのシリーズであるパウダー警部補ものを買ってきた。パウダー警部補はインディアナポリス警察のベテラン刑事。サムスンものにも、ちょい役で出てきたことがある。そのお返しというわけでもあるまいが、こちらにもサムスンがちょい役で出てくる。

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 パウダー警部補はもうじき50歳、19年間夕方から深夜までのタイムシフトで出勤する「夜勤刑事」である。数名の部長刑事を指揮して、管区の夜の番人を務めている。都会の夜にはいろいろな事件が起きるし、いろんな客(犯罪者も含めて)もやってくる。本書の舞台も、エド・マクベインの87分署シリーズのように、複数の事件が雑然とやってくる、リアルな刑事部屋である。
 
 10ドル札を拾ったと毎月届け出てくる老婆、学校が成績を不正操作していると訴える毛沢東主義者(マオイスト)の学生、アパートの窓から車に向けてライフルを撃つ男、倉庫から荷物を盗むのに同僚を殴る警備員、学校の職員室から消えたタイプライター、見事な仕掛けをしながら少しの金額しか持ち去らない窃盗犯、けんかや発砲事件は数知れず、インディアナポリスの夜は忙しい。
 
 そんな中、複数の女が絞殺され顔と指を潰される事件が起きる。一方マオイストの青年のガールフレンドが行方不明になり、その捜査をサムスンが引き受ける。パウダー警部補は女性連続殺人事件にただならぬものを感じ、過去に似たような事件が無かったかを調べ始める。
 
 未明に勤務を終わり、深夜のバーやレストランを経由して自宅に戻る日々のパウダー警部補。店のマスターも含めて会う人ごとに「良いおまわりになるためのクイズ」と称して、抱えている事件の概要を話し相手の意見を聞くくせがある。ギラついた野心も、燃え上がる正義感も特にはない中年刑事で、休日は黙々と畑づくりをしている。
 
 あまり目立つ探偵役でもなく、作品も地味なものだ。ただ、根強いファンがいるようで、サムスンよりパウダーが好きという読者もいるとのこと。サムスンものも面白い話とそうでないものが混在したシリーズだった。あきらめずに第二作も探してみましょう。