新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ラスト・エンペラー

 八幡和郎という人は、通産省(現経済産業省)出身の評論家である。TVの討論番組などでよく見かけ、その博学さと頭の回転の速さはよくわかったのだが、歯に衣着せぬ「毒舌」がちょっと気になる論客である。非常に多くの著作があり、「江戸300藩」のシリーズや「県別国盗り物語」、「フランス国王列伝」など海外も含めた歴史ものに特徴がある。

 
 本書は「お世継ぎ」という柔らかめのタイトルと違い、内容の濃い歴史ものである。発表は2005年、愛子内親王が生まれたものの「男系で万世一系」の天皇家の存続に暗雲が差したころである。本書の後ろの方1/3は、小泉内閣当時の「皇室典範に関する有識者会議」の批判を含め、自らの皇室典範改正案や、雅子妃殿下(現皇后)の健康問題にいたるまではっきりとした主張を連ねている。

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 僕はそこではなく、前半の特にヨーロッパの王族の歴史に興味を持った。ヨーロッパの王族の多くは姻戚関係にあり、ある意味王のレンタルや使いまわし(失礼)をしていた実態が描かれている。例えば英国エリザベス女王の夫君エジンバラ公フィリップは、ギリシア王の系譜だという。しかもギリシア人の血など一滴も混じっていない。何故かというと、ギリシア王家が絶えそうになった時、デンマーク王家から「レンタル」してもらったから。
 
 また、大公・王・皇帝の違いも教えられた。例えばリヒテンシュタインとかモナコくらいだと大公の領土。スペインとかフランスだと王国、それらを統べる「神聖ローマ帝国」だと皇帝というわけ。本書によれば、エチオピア帝国ハイレ・セラシエ皇帝を最後に崩壊した結果、日本の天皇が最後の「皇帝」となったということ。世界の首脳が日本に来たがっているのはその「ラスト・エンペラー」に会いたいがためだというのが彼の主張。
 
 だったら僕の住んでいるのは「日本帝国」なんだっけとまぜっかえしたくなるのだが、作者の右寄りぽい主張はあるものの歴史への博識は勉強になる。ハプスブルク家は戦争ではなく結婚で大帝国を作った。そういうことを知っておくことは、ヨーロッパの人たちと会話するときには必要だと思います。