新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

食欲の出るミステリー

 どうしても犯罪、その中でも凶悪な殺人などを扱うことの多いミステリーというジャンルでは、それを読んで食欲が出る・・・という作品は少ない。もちろん豪華なお料理が出てくるシーンもあるのだが、バラバラ死体や腐乱死体など出てくるわけだから、舌なめずりする人がいたらその方がおかしい。

 

 その常識を覆したのが本書。レストランでの料理とワインの組み合わせを語るシーンから物語が始まる。探偵役は、34歳の売れない女優ニッキイ。TVドラマ「マテーニ刑事もの」に主演したものの4作で打ち切りになり、ロスアンジェルスのレストランでのアルバイトで糊口をしのいでいる。そこにナパ・ヴァレーの大農園主がやってきて、彼女のワインセンスを買って雇いたいと言い出す。

 

 有名なワイナリーを営む富豪だしイケメンでもあるので付いて行った彼女の前に、農園のワイン職人の絞殺死体が現れる。複雑なワイナリー富豪一家の人間関係もあって怪しい人ばかり。ニッキイは持ち前の好奇心から、事件解決に乗りだす。

 

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 文章が軽妙で面白く、スピーディでユーモラスな展開。それはあるのだがミステリー単体としては、まあ平均的な点数かもしれない。しかし作中にちりばめられているワインのノウハウは半端ではない。

 

 ・ヤギのチーズとキノコのブルスケッタ ⇒ ソーベニヨン・ブラン

 ・ホタテ貝のソテー、レモンとバジルのリゾット添え ⇒ ピノノワール

 ・スティルトンチーズ ⇒ ポートワイン

 ・ヤギのチーズとアップルスモーク・ベーコンのタルト ⇒ シャルドネ

 ・焼きカキのハラペーニョソース ⇒ カベルネ・ソーベニヨン

 ・ポークテンダーロインのサルサソース ⇒ カベルネ・ソーベニヨンのブレンド

 ・真夜中のパスタ ⇒ ジンファンデル

 

 とりあえずブドウの種類だけ書いたが、どの谷のどういうブレンドがいいとのコメントもある。もちろん、各々のメニューの料理法まで書いてあるのが嬉しい。この本はミステリーの本棚と言うよりは、家内の家事関係の棚にあったほうが似合うと思います。