新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

陸上自衛隊の海上戦力

 憲法9条の縛りだろうか、長く海外での活動を禁じられてきた「Japan Self Defense Force」、他国から見れば明らかに「Japanese Army/Navy/Air Force」なのだが。海外を文字通り「海の外」と解釈したのか、海上機動力の整備や軍用機の航続距離延伸には消極的だった。北海道に着上陸するソ連軍の撃退が主目的だったから、仕方のない面はある。

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 それでも昨今、ソ連の脅威が相対的に減り中国の海洋進出がより危険になってきたことから「島嶼防衛・奪還」のドクトリンが議論され始めた。沖縄の米軍縮小を目指すためにも、自前の海上機動力、長距離航空戦力は必要である。例えば南西諸島での機動展開のため、陸自が独自の海上機動力をもとうとしているという。
 
 海自の艦艇は大型すぎて、埠頭が整備された大きな島にしか接岸できないからという理由だ。オスプレイも導入するのだが、もっと大量の物資・装備・人員を送り込むのに必要だとのこと。これを水陸機動団というらしいが、このような上陸用の装備を持ったのは帝国陸軍アメリカの海兵隊より早い。その名を大発動艇といって、通称「大発」、戦車1両を搭載することもできた。
 
 
 先見性があったと言うべきだろうが、その後帝国陸軍はこの分野でも「暴走」を始める。本書にあるように、潜水艦や航空母艦まで自前で作ってしまったのである。そのあたりの経緯は本書に詳しい。
 
★陸軍輸送用潜水艦(ゆ)艇
 排水量300トン前後、速力10ノット、物資24トンか兵員40名を運べる。3隻実戦参加し、全滅している。
★対潜水艦哨戒用空母
 排水量1万トン程度の高速輸送艦を改装、対潜哨戒機10~20機搭載。4隻完成し実戦参加は秋津丸のみ。
 
 陸軍・海軍の仲の悪さは各国共通だが、帝国陸海軍のそれはひどかったようです。その後輩たちも、先輩の轍を踏まずにやってもらいたいものですね。