新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

年金の物価スライド制

 以前憲法改正議論が高まってきたので、ミステリー作家和久俊三の「憲法おもしろ事典」を紹介した。その後僕が思ったほど、憲法論議は進んでいない。それはともかく、和久先生(弁護士でもある)のこの本も面白かった。埋蔵金発掘の権利関係、酒の上の口約束の効力、、借家人の権利、未成年者の借金などの事例が挙げてあって、蒸気機関車のばい煙訴訟、昭和天一坊事件などの判決なども面白く読めた。

 
 その中で僕の興味を惹いたのは、「国鉄運賃に合わせて家賃を決める」というある大家さんのアイデアについてである。昭和40年ごろの話で、国鉄運賃(東京・大阪間の2等運賃)が値上がりすればその比率に合わせて家賃を上げ、逆なら下げるというもの。裁判の結果、このような特約は不合理であるとして棄却された。

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 作者のコメントとして、国鉄は値上げをしても値下げしないからとか、端数の扱いがあってこのアイデアは実現が難しいとあるがこれは大きな問題とは思えない。またその付記として、「経済企画庁が発表する〇〇物価指数の変動に応じて、家賃や地代を値上げする」という特約も認められまいとある。これには違和感があった。というのは、現在の年金制度は物価スライド制がとられているからだ。デフレ時代を象徴するかのように、年金が減額されて困った人たちの報道はよくあった。
 
 もしこの判例を参考にして、「物価指数連動の年金制度は違法だ!」と訴訟をおこしたらどうなるのだろうか?家賃、地代と年金ってそんなに違うものではないと思うのですが。