新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

軍隊と自衛隊の間

 政策通と言われる自民党石破議員が、2004年に2年以上務めた防衛庁長官(現在の職名は防衛大臣)を退いてから著わしたのが本書である。「軍事オタク」とのうわさもある同議員だが、長官室に軍艦や戦車のプラモデルを飾っていたのは事実のようだ。それでも本書は、題名と異なり軍事というよりは民主主義についての持論を書いたものだと思う。

 
 徴兵制について、フランス革命で民主主義が確立してから国防は(王や貴族でなく)市民が担当すべきものになって導入されたものだとある。彼自身は今の日本に徴兵制は向かないとして反対の姿勢だが、国民/市民も国防の意思と基礎的な軍事知識はもつべきだという。自民党の議員の中にも、知識のなさからとんでもない主張をする人もいると本書にある。まして一般の人なら、「Fake News」が流れてもそれを判断できないだろう。

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 本書には2011年時点での「文庫版まえがき・あとがき」が付いていて、鳩山元首相の「普天間。最低県外」発言や、菅首相の震災対応を批判している。妥当な批判と思うが、このお二人戦後の首相では二人だけの理系卒なのだが、同じ理系出身としてNINJAも恥ずかしい限りの始末であった。
 
 安全保障を中心に、核を含むエネルギー政策や情報収集や管理、財政にまでふれ、北朝鮮の脅威にかなりのページを割いている。驚いたことに13年経っても状況は変らず、かの国のミサイルの威力が増した程度の変化しかない。
 
 本書に懸念されていた、有事法制集団的自衛権、ミサイルディフェンスは整備されたし、防衛庁防衛省となった。河野防衛大臣のもと、敵基地攻撃能力の議論も始まった。それでも現在なお、自衛隊が本当に戦える軍事力をもっているのかどうかには疑問が残る。具体的に何が問題なのか、本書によく整理されているので多くの人に読んでいただきたいと思います。