新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

憲法改正議論の前の予習

 和久峻三という人は、1972年「仮面法廷」で江戸川乱歩賞をとったミステリー作家である。TVドラマ「赤かぶ検事シリーズ」などの原作者である。自身も弁護士であり、法廷ものを得意とした。赤かぶ検事は飛騨高山などで活躍するが、作者が一時期中日新聞に務めていたこともあって中部地区を舞台にしたものが多いように思う。

 
 今回取り上げるのは、ミステリーではなく法律の入門書。安倍政権が憲法改正の議論に前向きだということで、古い本棚から引っ張り出して再読した。幅広いテーマを、クイズ形式や実判例を交えて分かりやすく書いてある。とはいえ、司法試験に出てきそうな少しハードルの高い問題も混じっている。
 
 特に2点、注意深く読んだ。ひとつは憲法13条「個人の尊重」で、デモ隊を正面からとらえた写真は肖像権の侵害にあたるかというプライバシー論。本書の初版が出た1982年には、個人情報保護法はまだ成立していない。それでも人権に関わる条項は13条以外にもいくつかあって、プライバシーの侵害から人権侵害に至る道は厳しく規制されていることがわかる。

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 もうひとつは憲法9条、安倍政権での憲法改正議論の焦点である。本書には、過去の政権が日本の軍隊/準軍隊をどう憲法上に位置付けてきたかが整理されている。最初は自衛力も持たないといい、自衛隊は戦力という程のものではないといい、西側でも有数の予算規模になって戦力でないと言えなくなると、自衛権は放棄していないので自衛隊は合憲だと変わった。
 
 勉強になったのは、侵略戦争自衛戦争の間に「制裁戦争」というものがあるということ。例えば、国連制裁決議に伴って武力行使をすることを言うらしい。これまで僕の意識にはなかったものだ。当然侵略戦争はNGで、自衛戦争はOKと思っている(これに反対の人もいるかもしれない)が、制裁戦争はどうなのだろうか?
 
 PKOで駐留していて、国際的に制裁対象(例:IS)の戦闘部隊を見つけたら、これを制裁する(攻撃して武装解除する)ことはやるべきだと思う。こういう議論を、国会では広くしてもらえるとありがたいのですが。