新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

21世紀のパーカー

 以前「悪党パーカー/人狩り」を紹介した、リチャード・スタークの「悪党パーカーシリーズ」の21世紀になってから書かれたものが本書(2001年発表)。「人狩り」が1962年の作品で、以降15冊が出版されたが1974年の「殺戮の月」で一旦終了していた。それが1997年の「カムバック」で文字通り再開、本書は再開後の4作目にあたる。

 

 誕生以来40年を経たパーカーと愛人のクレアだが、行動様式は何ら変わっていない。暗黒街の非情なルールに忠実で、他人を信じるということはまるでない。類を持って集まるゆえか悪党ばかりがパーカーに近づいてくるが、その中でもドライさはパーカーが一番だ。

 

 今回は昔からの悪党仲間フランクに錠前破りのラルフ、それにハッカーであるロルフの3人がパーカーの力(計画力や実行力)を求めてくる。狙いはあるIT成金の別荘にある「お宝」。別荘は家具まで黄金で出来ているが、警備員常駐、監視カメラ多数、隠し金庫に電子錠で厳重に守られている。実はフランクたちは一度その別荘を襲い失敗して仲間が逮捕されたものの、成金が隠している非常に高価な絵画を目撃していた。

 

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 パーカーはその話に乗って計画を立て始めるのだが、ロルフがパーカーのデータを格納したファイルがハッキングされ、パーカーの居所が分かってしまい殺し屋がやってくる。パーカーは殺し屋を返り討ちにするのだが、自分の命を狙う者の正体を掴むことと別荘襲撃計画を同時に進める羽目になる。

 

 殺し屋を殺してからのパーカーの処置が冷徹・迅速・用心深いもので、(妙な話だが)大変勉強になる。遺品から殺し屋のヤサを知ると直行して殺し屋の正体を探り依頼人への手がかりをつかむ。続いてクレアを避難させ、2度目に襲撃に備えてワナを仕掛ける。別荘襲撃の方も、IT成金が(ITバブル崩壊のゆえか)絵画を闇マーケットに流そうとして動き出し、それを察知した税務署たちに先を越されそうになる。

 

 21世紀初頭ということで「電子の要塞」も「ハッカー」もシンプルなものだが、パーカーが次々に襲ってくるトラブルを片付ける手際は際立っている。全くの悪党気分に浸りたいときは、おすすめのシリーズです。