新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

2番中堅ブリスバーグ、背番号49

 あまたのミステリーがあれど、ありそうでないのがプロスポーツマン自身が探偵役をする話。ハーラン・コーベンのマイロン・ボライターシリーズは確かにプロスポーツ界を舞台にしているが、探偵役のマイロンは引退したプロバスケットボール選手。ケガで引退した後FBIの仕事もしていて、現在はスポーツ・エージェントとして事件の探偵役を務める。

 

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 本書はメジャーリーグのレギュラー中堅手ハーヴェイ・ブリスバーグが、友人のリリーフ投手ルディが殺された事件を追う物語である。ハーヴェイは30歳、名門球団にいたが球団拡張に伴って新生チームジューエルズに移ってきた。各球団が出してもいいと思った選手がほとんどなので、新生チームの戦力は不十分だ。そんな中、ペナントレースの半ばを過ぎてもジューエルズは最下位はまぬかれていたし、ハーヴェイ自身も今まで経験のない.309の打率で打撃ベストテン入りしている。
 
 しかしロッカールームの浴槽で、ルディが死んでいたのをハーヴェイが見つけてから、チームは負けが込み、ハーヴェイの打率も.300そこそこまで落ちてしまう。ルディの死体からは通常出回っていない千ドル札が3枚見つかり、何故彼が殺されたのかの疑惑が深まる。直ぐに考えられるのが八百長だが、それができるのは先発ピッチャーや主軸の強打者だけというのが常識である。友人の死の原因を追うハーヴェイは、試合中に「事件を追うな、今度はお前が殺される」との警告文を受け取る。
 
 事件だけではなくペナントレースの行方もヴィヴィッドに描かれ、ジューエルズがトロント・ブルージェイズとの最下位争いに勝てるのか、ハーヴェイが初めて打率3割を超えて打撃ベストテンに名を連ねられるのかなどもサスペンスを醸し出す。題名のストライク・スリーとは三振を指すのは当然だが、ヤクザの使う武器にこういう名前のものがある。こん棒・首絞め紐・ナイフを一つにまとめたもので、殴り・締め・刺しができる「優れもの」である。
 
 メジャーリーグの球団、選手、取り巻きのメディア、ファンなどの生態を活写した秀作だと思う。これがデビュー作というのですから期待したいのだが、この後の作品「ディフェンスをすり抜けろ」は、バスケットボールが舞台。もっとプロ野球をとりあげてほしいのですが。