新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

世界をめぐる大活劇

 アンディ・マクダーモットという作家のデビュー作が本書(2007年発表)、考古学者ニーナ・ワイルド博士とSAS出身のボディガードエディ・チェイスを主人公にしたシリーズを7作以上発表しているという。表紙からしてドンパチ中心のアクション小説と思って買ってみた。


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 設定はなかなか面白い。チベットアトランティスの遺跡を探していた考古学者のワイルド夫婦とその探検隊は、何者かに襲われて命を落とす。アトランティスって海にしずんだんじゃなかったけ、なんでチベットでと読者は不思議に思う。
 
 そして10年後、亡き父母の遺志を継いで考古学者になった娘ニーナは、アトランティス探検に向かおうとする。父母を殺した勢力ブラザーフッドがやはり彼女を狙うが、大富豪フロストの命を受けたエディが彼女を救う。そこから、ニーナとエディの世界を巡る大冒険が始まる。
 
 アトランティスの手掛かりを探して、イラクの砂漠、アマゾンの奥地、カディス湾の海底、そしてチベットへと戦いの舞台は移っていく。エディたちのチームにブラザーフッドの内通者が居て、フロストの探検隊は再三奇襲を受けて犠牲者を出す。
 
 アマゾンの神殿の大仕掛けな罠、カディス湾の400m以上の海底遺跡からも、ニーナとエディはなんとか生き延びる。このあたり、アクション映画のクライマックスシーンのような「絶体絶命」の連続である。登場する古代の仕掛けや最新技術を取り入れた探索設備は、非常に面白い。
 
 それでも物足りなさを感じたのは、ストーリー展開がありきたりなこと。ああ多分こうなるな、と思うとそのようになってしまう。800ページ(ソフトバンク文庫は文字が大きいので、他の文庫なら600ページくらいか)にわたって、「新兵器」を除いては意外性があまりない。古代の罠にいたっては、TVゲームを見ているような印象すらある。
 
 小説は大きな筋立て(戦略級)、エピソードの積み重ね(作戦級)、表現やせりふ(戦術級)の3つからなっています。この作品は筋立ては〇、表現等は△(及第点)ですが、エピソードについては全くの期待外れでした。残念なこの作者、その後成長したのでしょうか。