新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

円には端がない

 本書はアイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」第三巻、ここで宇宙大河ドラマは一応の終わりを迎える。一応の・・・と言ったのは、この後30年を経てアシモフが第四巻「ファウンデーションの彼方へ」を発表、第五巻にも取り掛かるという情報があったからだ。

 

 それはともかく、前巻でファウンデーション(ズ)の創始者ハリ・セルダンの予測にもなかった突然変異種ミュールが登場して、第一ファウンデーションはミュールに征服されてしまった。巨大な軍隊も優れた技術者も、精神感応力を持つミュールには抵抗できず「転向」してしまったからだ。

 

 しかしセルダンは、銀河の反対側の端に第二ファウンデーションをつくっていたはず。銀河の完全征服をもくろむミュールは、優秀な軍人や才気煥発な少年を使って「第二」を探させるのだがことごとく失敗する。一方「第二」の側も、セルダン計画の歪み(ミュールの出現)を正そうと行動を起こしていた。「第一」が物理的な技術者の集まりで構成されていたのとは違い、「第二」は心理的に特殊な能力を持った少数の集団だったのだ。彼らはミュールほどではないが、精神感応力を持っていた。

 

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 突然変異種で肉体的にも精神的にも奇形だったミュールは、子孫を残せず40歳そこそこで死んだ。ミュールの帝国はその麾下にあった将軍が受け継いだが、「第一」が復活して銀河の多くを支配するようになる。今度は「第一」が「第二」の所在を探し始めるのだが・・・。

 

 ミステリー大好きのアシモフは、「第二」は何処にあるのかという謎解きをシリーズのクライマックスにもってきた。ミュールの後継将軍の星と「第一」の宇宙戦争など、ごくあっさりと済まされてしまう。運命のいたずらで「第二」の場所に気づいた少女とその関係者が集まって次々と推理を披露するのだが、片端からひっくり返される。最後に少女がつぶやく「円には端がない」によって、その場所が明らかになる。

 

 この部分「どんでん返し職人」のディーヴァーを思わせるものがあるが、それほど洗練されてはいない。全三巻を読み終えて、発表時期(1950年代)を考えれば無理はないのだろうが、サイエンス部分がちょっと冗長に思えてしまった。アシモフ先生、ミステリー色を強め過ぎたのではないでしょうか。