リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンクはユニバーサルTVのプロデューサー。コンビを組んでいくつものTVシリーズを書き、TVのオスカーである「エミー賞」の最優秀脚本賞を2度受賞している。彼らの脚本で日本で一番よく知られたのは「刑事コロンボ」だろう。よれよれのコートにボロ車、風采の上がらない殺人課のコロンボ刑事が、エリートである殺人者の考え抜かれた完全犯罪(に近い)計画を暴く話である。
主演のピーター・フォークは、小柄でハンサムとも言えない性格俳優。第二次世界大戦のイタリア戦線を描いた映画「Anzio」で、ベテランの下士官を演じていた。主役の従軍記者役ロバート・ミッチャムより、印象が強かったのを覚えている。本書の舞台は有名な老将軍の財団法人「アメリカ戦略研究所」で、ここでは政策研究のほか傭兵訓練も行っている。その執行責任者ブレイリー大佐は野心家で、将軍に隠れて海外での違法なビジネスを手掛けている。
気づいた将軍は傭兵学校の特務曹長に命じてブレイリー大佐の悪事を暴こうとするのだが、特務曹長は掴んだ証拠を将軍に報告せずブレイリーを強請ろうとして殺されてしまう。曹長の死は傭兵訓練中の事故に偽装されていたのだが、どういうわけか最初の現場検証から「殺人課のコロンボ警部」がやってくる。動揺するブレイリー大佐だが、彼のち密な頭脳は鉄壁のアリバイを用意していた・・・。
本書の発表は1991年、すでにAppleのMacやIBM/PCはポピュラーになっていて、ロス市警もコンピュータの導入を進めている。導入教育を嫌って逃げ惑うコロンボ警部だが、その過程でPCの特性を知りブレイリー大佐の尻尾を掴むことに成功する。確かこの物語は「迷子の兵隊」という邦題で放映されていたように思うのだが、南北戦争の激戦「ゲティスバーグの戦い」のジオラマがストーリーに大きく絡んでいた。
本書は二見書房から出版されていたもので、僕は本で読んだ記憶はない。30年くらい前のことだから、ビデオに撮って見たので本を買うことはしなかったのだろう。それでも2時間ドラマの内容で、それより少し長い時間かければ読める書籍というのもありがたいものです。このシリーズ、また見つけたら買ってきましょう。