新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

極寒シカゴの女探偵

 サラ・パレツキーのV・I・ウォーショースキーものの第三作が本書。ヴィクことミズ・ウォーショースキーはアラサーのバツイチ女探偵、ホームグラウンドはシカゴである。僕は経験がないが、シカゴの冬は零下30度にもなるという。この極寒の街で、ヴィクは大掛かりな金融犯罪に巻き込まれる。

 

 発端は前作同様親族からの依頼、母親のガブリエルにつらく当たり追い出した大叔母ローザとはガブリエル亡き後も復縁できていないのだが、ヴィクは急に呼び出される。75歳になっても教会で会計係をしていたローザだが、教会の金庫から500万ドルぶんの株券が偽造のものにすり替えられた事件で休職になっている。もちろん彼女に容疑が絞られているわけではないが、金庫に近い人たち全員が「謹慎中」ということ。大叔母と仲は良くないのだが、他に親族もほとんどいないヴィクはこの事件を洗い始める。

 

        f:id:nicky-akira:20190807211252j:plain

 

 一方ヴィクの男友達ロジャーと女友達アグネスは、ある保険会社の動向を探っていた。出所不明の資金がこの保険会社の株式買い占めにつぎ込まれているようで、再保険会社重役のロジャーも、証券アナリストのアグネスも何が起きているのか探ろうとしていた。そんな矢先、夜中までオフィスにいたアグネスが頭を2発撃たれて殺されてしまう。

 

 ヴィクの方にも株券すり替え事件から手をひけとの脅迫があり、無視していると待ち伏せにあったり、アパートに放火されたりする。極寒の中、傷つきくたくたになりながらヴィクは孤独な捜査を続ける。マフィアのお金や教会が(頼母子講のような仕組みで)集める大金、イタリア貴族の遺産などがからんできて、大規模な金融犯罪が進んでいることがわかる。

 

 マネーロンダリングの仕組みを暴く過程も、ヴィクが暗殺者と戦う姿も面白いのだが、シカゴでのヴィクの私生活も興味深い。一人称のこのミステリーはヴィクの毎日を克明に追うので、彼女が3食何を食べたか、どう思ってメニューを選んだか、料理したかが描かれている。生身の女探偵の苦悩と活躍、そして生活が味わえるシリーズです。もう少し読んでみましょうね。