「COVID-19」が生物兵器として作られたものかどうかは今後の検証にゆだねるとして、BC(Bio, Chemical)兵器について復習しておこうと思い本書を再読してみた。本書は2003年に、「オウム真理教」の一連の事件をひとつのきっかけとしてまとめられたものらしい。
前半で化学兵器(神経剤、びらん剤、肺剤など)、後半で生物兵器(炭疽菌、ボツリヌス菌、野兎病菌、痘瘡ウィルスなど)について、症状や致死率、予防や治療の方法が整理されている。同時に戦争やテロで実際に使われた事例の紹介も多く、万一の時のための貴重な知識を得られる。
驚くのは「オウム真理教」が実に多様な「兵器」を開発していたこと。松本サリン事件、地下鉄サリン事件のサリンはもちろん、それより凶悪な神経剤VXも、肺剤の一種ホスゲンも、シアン化物まで使っている。さらにさかのぼれば悪名高い「石井731部隊」、ハルビンその他の防疫給水部で炭疽菌、チフス菌、コレラ菌などの研究・実験をし、1940年にはペスト菌を持たせたノミを上海などの都市で使っている。
除染したり消毒すれば消えてくれる化学兵器に比べて、自己増殖可能な生物兵器はより厄介だ。英国がアメリカ先住民と戦った時、痘瘡ウィルスに汚染された毛布などを彼らに送り付けて大きな被害を与えた(英国人は種痘をしている)話や、1941年のスターリングラードでソ連軍が野兎病菌をドイツ軍に使いながら、自軍や住民にも肺炎患者を大量発生させた例が示されている。
生物兵器のカテゴリーを米国のCDC(疾病管理センター)では次のように分けている。
◆カテゴリーA:痘瘡ウィルス、炭疽菌、ペスト、野兎病菌、ボツリヌス菌等
ヒト・ヒト感染力が高く致死性が高い。ゆえに公衆衛生上のインパクトが大きく、社会をパニックに陥れ安全保障上も脅威になりうる。
◆カテゴリーB:コレラ菌、チフス菌、アルファ(脳炎)ウィルス、Q熱リケッチア等
中程度の伝染性があるが致死率は高くない。疾患サーベイを行い適切に対処する。
◆カテゴリーC:ニバ脳炎/ダニ脳炎ウィルス、ハンタウィルス、多剤耐性結核菌等
生産と入手や散布が容易で、伝染性・致死性共に高いもの。これも公衆衛生上のインパクトが大きい。
加えて、遺伝子操作されたものでカテゴリーDを作る議論が始まっているとある。もうできているはずだから、最新の研究にも期待しましょう。