新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

古書の世界の連作大河完結

 2013年1月から、フジテレビの「月9枠」で放映されたTVドラマ「ビブリア古書堂の事件手帳」は、歴代最低の視聴率で大コケに終わった。380万部もうれた原作に、当時の人気若手女優剛力彩芽を起用しながら失敗作に終わっている。


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 全7巻のこのシリーズ、僕はようやく読み終えた。本の世界に住み古書にはやたら詳しいのだけれど日常生活は全然ダメ、美女なのに男性恐怖症とも思える若き古書店のあるじ篠川栞子が主人公。ひょんなことから彼女の店でアルバイトをすることになった五浦大輔は明るい性格の好男子だが、活字がまるきり苦手という肉体派の青年。このデコボココンビが、本にまつわる謎を解いてゆく連作ミステリーである。
 
 古書店というものがどういうビジネスをしているのか、仕入れや仲間内での流通、古書の鑑定から本の装丁含めた扱い方まで、このシリーズは事細かに教えてくれる。ひとつの中・短編には特定の古書がからんでいて、登場人物やその親族の過去までが古書を通じて明らかにされる。
 
 例えば第6巻では、3つの中編が収められていてその全てが太宰治の著作にからんでくる。さらに太宰が「自家用」と自著した稀覯本を巡って事件が起きる。また最終巻では、全編シェークスピアの骨董品的古書と、近代になってからの複製をめぐる争いに二人は巻き込まれる。
 
 栞子さんのビブリオ古書堂には、いろいろな客が出入りし、同時に多様で複雑な謎が持ち込まれる。栞子さんはホームズばりにこれらの謎を解くのだが、おれこと五浦青年というワトソン役がいないと、精神的に不安定になってしまう。そう、これはデコボココンビの青春ラブストーリーなのだ。
 
 作者の三上延という人の他の著作は読んだことがないが、ホラーからファンタジーまで幅広い作風をもった人だという。本書もミステリーの形式はとりながら、どことなくファンタジーの香りがする。全体として見ると、第一巻でちょい役で出てきた人がのちに大きな関りをしてくるなど、大河ドラマのような印象を持った。
 
 ミステリーとしての意外性やトリックはともかく、古書の世界で「本を通じて、それに関わった人たちの生活まで見抜く」能力を持った娘と、実直な青年のゆっくりとした恋を描いた佳作です。見ていないのでなんとも言えないのですが、「月9」はなぜコケたのでしょうか?