新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ひよわだが抜け目のない羊

 本書の作者A・A・フェアは知らないという人も、ぺリー・メイスンという弁護士のシリーズには記憶があるのではなかろうか。A・A・フェアとは、ペリー・メイスンシリーズの原作者E・S・ガードナーの別名である。ガードナーは、私立探偵ドラルド・ラムと探偵所長のバーサ・クールを主人公にしたシリーズを別名で書いたのだ。

 

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 メイスンシリーズは、膨大な原作があってTVドラマにもなった。日本でも書籍はもちろん、TVシリーズが放映されている。一方ひよわな青年ラム君と女丈夫のバーサのコンビは、あまり知られていない。しかし僕はラム&バーサものは、メイスンシリーズよりも良質なミステリーだと思っている。
 
 小柄な青年ラム君は、体重140ポンドというから60kgもないくらい、アメリカ人としては小柄である。しかし弁護士(多分カリフォルニア州だろう)資格もあって、法律や捜査手法に精通し抜け目がない。本書では探偵所のパートナーにまで昇格し、知恵のシンボルであるフクロウに例えられている。一方探偵所長のバーサは、40歳代かと思われ体重は非公表、ラム君くらいは吹き飛ばしてしまう。
 
 今回の事件は、ロサンゼルスの探偵をニューヨークの弁護士が雇い、ニューオリンズで人探しをさせるという三都物語のような始まりを見せる。尋ね人は抜け目ないラム君があっさり片付けるが、殺人事件に巻き込まれる。
 
 いろいろな人物がからんできて複雑な様相を見せてきても、容疑者は多くないので犯人あてミステリーとしてはヒネた読者にはそう難しくはない。しかし徒手空拳のラム(羊)君が、官憲を出し抜いて真相に迫るプロセスにはうならせられる。発表が1942年、真珠湾攻撃の直後ということで日本製のストッキングがヤミで流通しているという世相も面白い。
 
 コミカルな表紙で損をしていますが、立派なハードボイルド・ミステリーです。300ページそこそこで、気軽に読めるのも、ラム君&バーサもののいいところですね。