新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

李氏朝鮮の実態

 昔は何度も旅行に行っていた韓国、特に文政権になってからは困った隣人になってしまい渡航する気も起きない。さて、と考えてみるとかの国のことは、

 

伊藤博文暗殺

閔妃暗殺

 

 くらいしか知らない。太平洋戦争後、徴用工問題/慰安婦問題など持ち出されて、ぎくしゃくした関係になっている程度の知識しか僕にも無かった。日韓の不仲の原因は何なのか、その疑問に答えてくれたのが本書である。著者の呉善花は1956年済州島生まれ、日本に留学し日韓文化協会の理事も務めた人だ。

 

 著者には「日帝だけで歴史は語れない」という著書もあり、本書では李氏朝鮮末期、日清・日露戦争を経て日韓併合が成るまでの歴史を半島人の視点で描いている。著者も韓国人として「日本人は反省をしない」と教育されていたが、日本への留学から考えが変わり「李氏朝鮮の問題」を明記したいというのが本書執筆の動機となった。

 

 李氏朝鮮は500年にわたって半島を支配した王権だが、武官ではなく徹底した文官(官僚)支配の時代だった。朝鮮半島は日欧の国のように「武力で統一を果たした封建国家」を経験してないと本書にある。限られた軍事力でも生き延びてこられたのは、清国などの保護があったからだ。

 

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 その清国が衰え欧米勢力が迫ってきても、王朝は何も変わらなかった。支配勢力はすべてが世襲、官僚たちは内部抗争に明け暮れ、増税をして王妃の祭祀に浪費するなど市民無視の政治が続いていた。改革を叫ぶ人たちは恐怖政治で排除され、そこに王の父(大院君)と妻(妃)の勢力争いが起きて、清国軍や日本軍が半島に侵攻するようになった。

 

 アヘン戦争などで清国を侵略した欧米列強が日本や韓国にも迫った時、その対応は分かれた。日本は開国の道を選び政治体制を一新して富国強兵・産業振興に務めた。徳川家が天皇家に変わっただけの封建国家体制がそれを可能にしたと著者はいう。

 

 一方の李氏朝鮮は古い体質の王権国家のままだったので、発想の転換が必要な開国を選べず攘夷の道を行き、結果として滅びたということだ。著者は最後に、「日帝時代の徹底した(フェアな)分析に着手した時、ようやく韓国は李氏朝鮮の呪縛から離れられる」と述べている。同時に「併合に至った李氏朝鮮側の問題」を研究する動きは、韓国内ではほとんどないことも嘆いている。

 

 それは文政権ではほぼ不可能と思いますが、近い将来可能になるのでしょうか?