新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

コレクターとの闘い

 デイヴィッド・マレルと言う作家の名前を見て、どこかで聞いたなと思った。表紙を見て、砂漠の戦闘小説かなと思って購入し、帰りの列車で解説を見て、マレルのデビュー作は「一人だけの軍隊」だったことを知った。そう、デイヴィッド・マレルは映画「ランボー」の原作者だったわけだ。

 
 ベトナム帰還兵のランボー(もちろんシルベスター・スタローンである)が、社会に受け入れられず流れてきた街の警察署長に目を付けられ山林に逃げ込む。大規模な山狩りに対して、武器はコンバットナイフ1本だけ。ついに反撃にでたランボーが、最後にM-60を片手打ちするシーンに快哉を叫んだ視聴者も多かったと思う。
 
 本書も、主人公のチェイス・マローンはパナマなどで戦った海兵隊のヘリパイロット。今は退役してそこそこ実力のある画家として暮らしている。世界でも指折りの「死の商人」ベラサーからの依頼は、若い妻シェンナの肖像画を描いてほしいというもの。チェイスが断ると、ベラサーはチェイスの家を壊し経済的な封鎖をかけてくる。
 
 怒ったチェイスにCIAに務めている戦友ジェブは、ベラサーの秘密を告げCIAのベラサー排除計画を手伝えば復讐もかなうという。ベラサーは天然痘ウィルスを加工した兵器を入手しこれを紛争地帯に売ることを企んでいるらしい。CIAはこれを止めたいのだが、ベラサーは重武装の兵士に守れらた要塞に住んでいて軍隊でも手が出せない。

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 ベラサーの妻4人は皆よく似ていて、前妻3人は肖像画を描かれた後、事故で死んでいる。ベラサーの要塞でシェンナの肖像画を書き始めたチェイスは、絵が完成したらシェンナも殺されると確信し、2人で脱出する計画を練り始める。その手段とは、手慣れたヘリを盗むことだった。一旦は脱出してCIAにかくまわれた2人だったが、そこにもベルサーの私兵がやってくる。CIAにも裏切者がいると知ったチェイスは偽名でメキシコに逃れるが、そこにもベルサーの魔手が迫ってきた。
 
 ベルサーは若くして死んだ妹に似た娘を見つけると結婚し、妻が30歳(妹は死んだ年)に近づくと肖像画を遺して殺し、次の若い妻をめとることを繰り返してきた。凶悪な「女性コレクター」である。赤褐色(絵の具ではBurnt Siennaという)の肌を持つイタリア女シェンナも、肖像画にされる時期が近づいていたのだ。ベルサーにシェンナを奪われたチェイスはジェブらの助けも借りて、ベルサーの要塞に乗り込む。
 
 チェイスとシェンナの愛の物語としてはやや平板なのだが、プロであるチェイスの逃げ方・隠れ方は興味深いものだ。武装ランドローバー、武装ヘリが乱舞し、.50口径の重機関銃が火を吐くうえに、天然痘ウィルスの不気味さもあって、戦闘小説として十分楽しめました。