新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日英同盟のきっかけ

 「北京の55日」という大作映画がある。1900年の清朝末期の義和団事件を描いたもので、主演は米国海兵隊のマット・ルイス少佐役のチャールトン・ヘストン。この作品には、伊丹十三が演じた日本陸軍の柴五郎中佐も登場する。エヴァ・ガードナー(ロシアの男爵夫人)、デビッド・ニーヴン(英国公使)らの名優に交じり、比較的大きな役割だったと記憶している。映画は、北京の外国公使館地区に籠城した各国の高官や軍人の55日間の籠城戦を描いたものだ。

 

 この事件の中で英国高官が、「あの小柄なコロネル・シバは、どこにでも(必要とされるところに)いつでも現れる」と柴中佐とその指揮下の日本兵を賞賛している。柴五郎の活躍は、各国軍隊が自国の大使らを救援するために派遣された軍隊の先陣を切り、北京における義和団の攻囲を解いた。この時の迅速かつ規律だった行動は、各国の賞賛を浴びたという。それは攻囲の中にいた「コロネル・シバ」と日本兵にもあてはまった。外交史の専門家は、各国高官の前で立派な活躍を見せたことで「日本の軍隊」を世界に認めさせるきっかけになったという。

 

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 すでに「日清戦争」で勝利は治めていたものの、それまでの日本軍は列強からは認知されていなかった。しかし義和団事件によって列強、特に英国はこのアジアの新興国に注目し始める。英国はロシアの膨張に頭を悩ませていて、ロシアの東側を抑えてくれる勢力を探していたのだ。

 

 義和団事件の後日英同盟が成立し、大日本帝国は「日露戦争」でもかろうじて勝利を収めるまでに成長する。柴五郎も英国のビクトリア女王から勲章を授与され、ノギ・トーゴー以前に世界に名を知られる日本軍人となった。

 

 柴五郎は会津藩士の子で、賊軍出身でありながら陸軍で才覚を表し、早くから国際舞台を経験していた。彼は陸軍大将として第二次世界大戦の敗戦まで生きたが、その生涯を以下の事件をからめて描いたのが本書である。

 

 ・鳥羽伏見の戦い

 ・戊辰戦争

 ・西南の役

 ・日清戦争

 ・閔妃暗殺

 ・義和団事件

 ・日露戦争

 

 まさに帝国陸軍の歴史のような一生、750ページに余る大作ですが、一気に読んでしまいました。