本書は先月別ブログで「朝まで生テレビ、400回記念」を紹介した、ジャーナリスト田原総一朗の日本現代史。内容は池田隼人から安倍晋三にいたる、日本の歴代首相の言動・思考である。特に後半(1989年以降)は、首相やその周りにいる人、対立する人などを「サンデー・プロジェクト」や「朝まで・・・」に呼んで、自ら問い詰めたQ&Aなども含めた生々しいものになっている。
ちょうど今、自由民主党の総裁選挙と(立憲)民主党の代表選挙が同時進行中だが、かつて日本の首相がその地位に昇るのに、また首相を周りが辞めさせるのに、どのようなことが起こったかは勉強になると思って読んでみた。歴代の首相の印象的なエピソードは、
◇池田隼人
「中小企業の5人や10人の業者が倒産し、自殺しても構わない」と放言したことになっているが、これはメディアのでっち上げ。
◇佐藤栄作
新聞が嫌いで退陣会見でも「新聞は出ていけ」と言った人。「何もしなかった7年8ヵ月」などと叩かれたが、沖縄返還などは成し遂げた。
◇田中角栄
独特のカネ集め手法で金権政治は生んだが、細部に至るまで法律を熟知し官僚を自在に操った。「日本列島改造論」の前に日本海側を地下足袋・脚絆で歩き回った。
幹事長・官房長官含めて「田中派」を丸のみ、「風見鶏」と評されながらも日米同盟を強化し、吉田時代からの「エセ一国平和主義」からの脱却を目指した。
◇竹下登
田中派の重鎮でありながら、謙虚で何事も控えめ。しかし当の角栄が一番恐れた男だった。現実に「田中派内クーデター」で首相の座を得、消費税導入への道を拓いた。
久々の本格内閣と期待されながら、官僚のコントロールに失敗。財政構造問題に着手したまでは良かったが、不良債権問題を先送りにして不況を長引かせる結果に。
「自民党をぶっ壊す」と郵政民営化、道路公団民営化、金融制度改革を民間(例:竹中平蔵教授)らの力も借りて推進した。著者から「人間として問題がある」と総裁選の行動を非難されるも「権力とはそういうものだ」とTVで話した。
圧倒的な支持を得て政権交代を果たすも、マニフェストはまるきり実現できず、「Trust Me」とオバマ大統領に言った普天間問題などで失点相次ぎ辞任。
長寿のジャーナリストである著者はますます意気軒昂、これからも僕らに「次はどうなる」を教えてくださいね。