本書はハーラン・コーベンのマイロン・ボライターものの第6作。元バスケットボールのプロで、現在は<MBスポーツレップス>というエージェント会社を運営しているマイロンと、その仲間たちが活躍するハードボイルドシリーズである。
解説には、その仲間たちが物語の中での役割を微妙に変えたり、隠されていた過去が読者に知らされたりするから、一編完結ではあるが順番に読んだ方がいいとある。ある程度偶然なのだが、僕はそのように読んできた。仲間たちとは、
・ウィン
マイロンの大学時代の友人、大富豪で投資コンサルタントをしている。格闘技も射撃もうまく、必要とあれば「殺し」も眉一つ動かさずにできる。
・エスペランサ
ヒスパニックの元アイドルプロレスラー、<MBスポーツレップス>の共同経営者になるのが望みで、前作の最後に共同経営者になっている。
・Bigシンディ
<MBスポーツレップス>の受付嬢、2m近い身長の「巨人族」。最初はヒール役としてプロレスのリングに上がっていたがエスペランサとタッグを組んだこともある。
前作の最後で心に痛手を負ったマイロンは、仲間たちにも行き先を告げずカリブ海で3週間を過ごしていた。そこにウィンが(自家用ジェットで)現れ、エスペランサに殺人容疑がかかっているという。殺されたのはマイロンが昔から知っていて、今年ヤンキースにトレードされ活躍していたクルーという投手。彼は<MBスポーツレップス>のクライアントでもあった。
いろいろなスポーツの内幕を見せてくれるこのシリーズ、今回は野球である。本文中に「TV観戦はフットボール、テニスは貴族のもの、ゴルフは王侯のもの、しかし野球は魔術なのだ」とある。マイロンも子供のころは野球が大好き、さびれつつあるブロンクスんいあるヤンキースタジアムに通ったと回想している。
クルーは一時期酒と麻薬におぼれていたが、今は90マイルの速球とリモコンしているように曲がり落ちるカーブを武器に活躍していたはず。それが射殺されエスペランサが拘留されたが、彼女は口を閉じマイロンにすら逢いたがらない。ヤンキースのオーナー、ギャングの系列のエージェント会社、S&Mクラブなど多様なニューヨークの組織・人が入り乱れる。
意外性もあってなかなか面白いシリーズなのですが、難点は500ページ越えの長さ。解説は「無駄口がすてき」と言うのですが、もうちょっと短くなりませんかね。