新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

クリスマスの教会バザー

 本書は、ジル・チャーチルの「主婦探偵ジェーン・ジェフリイもの」の第二作。前作「ゴミと罰」でコミュニティへの通いの家政婦殺しを解決したジェーンが、ふたたび殺人事件に巻き込まれる。ジェーンと親友シェリイは、協力してクリスマスの準備に忙しい。彼女たちの「ママ友コミュニティ」では、オブリゲーションが多いのだ。

 

 例えば子供たちの学校への送り迎え、ジェーンのように(日本風に言えば)高校・中学・小学校に一人づつ通わせている母親は、学校の始業終業時間が違うので一人では手が回らない。コミュニティで当番制にして、子供たちを送り迎えするのだ。大事な子供を預けるのだから「政府のTOPレベルの人物証明」を得るくらい、送迎グループメンバーになるのは難しい。

 

 学校関係の補助業務も多い。例えば幼稚園児の体重測定の立ち合い、小学校の朗読会の世話、イベントで七面鳥の腹に食べ物を詰め込む係というのもめぐってくる。近づくクリスマスに向け、教会バザーの会場準備や出展募集もしなくてはいけない。

 

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 そんな忙しい日々に、ジェーン宅に古い友人フィリスとその息子がやってくる。フィリスは今は大富豪の後妻に収まっているのだが、16歳のころ高校の上級生と駆け落ち事件を起こし、息子を生んでいた。長く生き別れだった息子のボビーを最近見つけ引き取ったのだが、ボビーは底意地の悪い性格。フィリスの夫や前妻の子供たちと相いれず、2人で家出してきたらしい。

 

 到着早々傍若無人にふるまうボビーにジェーンもシェリイもキレてしまい、フィリス親子は付近の空き家を買い取ってそこに移っていった。空き家の隣家は、15年前に亡くなった伝説のロックスターの未亡人宅。2軒とも「金に糸目はつけない」振る舞いをするので、ジェーンのコミュニティにはさざ波が立つ。特に未亡人宅では、教会バザーをさせてもらうつもりなのだ。ところがフィリスたちが引っ越した翌朝、フィリスが刺殺体で発見された。前作同様捜査を担当するのはヴァンダイン刑事、いやおうなくジェーンは事件の渦中に・・・。

 

 得意ではない料理に追われ、犬猫にエサをやり、子供たちの服を洗濯し、クリスマスの飾りつけをしながらジェーンは、フィリスの過去から事件の真相を探りだす。それほど複雑な謎ではないものの、ユーモアたっぷりの中にしっかり伏線を張ったミステリーでした。第三作以降はまだ入手していません。引き続き探しましょう。