本書も先月出版されたばかりの本、当初1万部以下の予定だったのが10倍増刷しているという。これも著者ではないが関係者から廻してもらって読んだ。米国在住の病理学者峰博士に、編集Yことジャーナリストの山中氏がSkypeでインタビューしてまとめたものである。
世界中で猛威を振るう「COVID-19」だが、その対処法については各国手探りの状態が続いているし、メディアやSNS上ではトンデモ話が横行している。編集Yはこのモヤモヤを吹き飛ばそうと識者を探し、人づてに峰博士にたどり着いたとある。20回にも及ぶインタビューでの結論は、「情報にいかに接し、いかに考え、いかにそれらを使って困難に立ち向かうか。それを個々人がコンスタントに実行して欲しい」というものだったとあとがきにある。
本書には感染症の基礎から医師の診断の考え方、ワクチンの作り方やその種類、PCR等の検査の意味など、専門的なことは必要最小限説明されている。しかしそれらは単なる素材であって、本質は「まだ未知の部分が多いこのウイルスに対して、人類はどう考えるべきか」にある。これは軍事行動における「Fog of WAR」にも似た、普遍的なインテリジェンス活動と言ってもいい。
峰博士は、日本の政府が専門家会議や分科会の提案を受けてとった対応について評価している。ただ説明は不十分だったようで、一言半句をメディアが切り取った結果不都合が生じたのかもしれない。たとえば西浦教授が主張したのは病理学の統計的立場から「人と人との接触を8割減らせば収束する」であって、具体的に何を8割減らせばいいかは含まれていない。
PCR検査についても、誤判定が2割以上あるので濃厚接触者の感染確定をする目的で使うならいいが、不特定多数から陽性者をあぶりだす目的でつかうものではないと峰博士はいう。感染確定に限定することは当初政府の方針だったが、検査件数が伸びないとの批判に遭った。そこで「検査数を増やします」となるが、あぶりだすことに意味がないとの説明も無かった。
ワクチンについても知るべきことは多く、今後の接種でまた政府批判が巻き起こりそうだ。政府はちゃんと説明をし、メディアはそれを正しく伝え、市民は勉強をする。そうしないとますます混乱するということですね。