新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

中国と日本のこれから

 米国の分断大統領選挙や、欧州・ロシアの混迷についていくつかの本を読んできた。さて残ったエリアがある。アフリカやオセアニアもあるのだが、どうしても中国は避けて通れない。それに日本そのものの問題もある。そんな思いで手に取ったのが本書(2016年発表)、著者船橋洋一氏は元朝日新聞主筆で現在は独立系シンクタンク「アジア・パシフィック・イニシャティブ」の理事長である。

 

 本書にはもちろんロシア・欧州・米国のことも書かれているのだが、これまで紹介したいくつかの関係書籍と矛盾する主張は少ない。あえて言えば本書だけ、ロシアとの北方領土交渉に明るい見通しがあるから、まずこれを解決した上で竹島尖閣問題に向き合うべきだとしていることくらい。

 

 さて本書で一番知りたい中国の行方だが、発表当時はまだ習大人もこれほどの長期政権(核心)化はされていなかった。オバマ大統領との単独会談で延々旧日本軍の大陸での悪行を述べたのに、オバマ大統領が「日本は同盟国で、友人で、民主国家だ。そこまで悪く言うことは許さない」とさえぎったと本書にある。まだ外交未熟だったゆえのことかもしれないが、日本に対する本音が透けて見える。

 

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 マクロ経済の視点では中国の発展をささえてきた人口ボーナス期はもうじき終わり、総人口ではインドに抜かれることになる。また経済発展は多くの市民にはいきわたらず格差拡大により世情も不安になり、周辺地帯で独立運動や国境紛争が激化すると予測される。だから米国のシンクタンクなどは、2030年が中国のピークだという。本書はそんな中国と誤りなく付き合うために、日本に7カ条を求めている。

 

1)在中の日本企業が、過剰反応をして逃げ帰らないこと。

2)日米同盟の堅持、強化。

3)韓国との関係改善。

4)インドとの戦略対話、人事交流の促進。

5)ロシアとの関係改善と領土問題の解決。

6)中国と「戦略的意志疎通」を構築。

7)中国との歴史認識の共有化を深める。

 

 日本にしてみれば隣の核を持った大国なのだが、中国にしてみれば100年前の強敵であり、ロシアやインドなどと包囲網を作られては困る相手が日本というわけ。ただ本書発表後、香港問題や台湾問題がより大きくなり、新しい時代のデータ覇権など巡る対立も深くなってきています。2030年をピークに大人しくなってくれるのか、何かが起きるのか日本にとっての最大の外交課題がここにあることは確かですね。