新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

社会保障改革要、そこまでは同意

 2015年発表の本書は、当時流行っていた「ピケティ理論」にも乗って、日本の格差社会を告発してブームを巻き起こした書である。筆者の藤田孝典氏は生活保護や貧困対策に注力するNPO代表で、Web上の論客としても有名だ。

 

 本書は高齢者間の格差が広がり、現役時代普通の生活をしてきた人でも「下流老人」の陥る可能性があるし、今の若い人の世代にはその可能性が著しく増すと警告している。「下流老人」の特徴は3つの「ない」にあるという。

 

・収入が著しく少「ない」

・貯蓄がほとんど「ない」

・頼れる人がい「ない」

 

 65歳以上の無職高齢2人世帯の平均月収入(年金など)は約21万円、ここから社会保険料等3万円を引いた18万円が可処分所得だが、支出は24万円なので約6万円を貯蓄等から補填しないといけない。現役時代に十分貯蓄できなかったり、病気等で貯えを失うとたちまち家計破綻に追い込まれるとある。

 

 本書の前半は、著者がNPOの現場で出会った不幸なケースが紹介されている。最後のセーティネットである生活保護は満額で13万円/月程度支給されるが、それ以下のお金で生活をしている人は少なくないとある。本来生活保護が必要な人をどれだけカバーしているかという捕捉率は、日本では1/3に満たないともいう。

 

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 かつて400万円の年収があれば普通に暮らせたが、今はそれでは苦しい。その理由は、

 

核家族化、非婚化で家族単位が小さくなった。

・(特に都会で)物価が高騰している。

・家族の関係が希薄化し頼れなくなった。

 

 悲惨な孤独死を防ぐため、NPOでは生活保護受給を勧め支援するのだが、

 

・オカミに頼りたくないという意識

生活保護切り下げをする政府与党

・行政窓口での手続きなどのハードル

 

 があるので社会保障制度改革が必要だと、いくつかの提言をしている。提言そのものに異論はないが、その財源として富裕層狙いや資産課税を主張しているのは問題だ。今でも十分大きな政府だし、富裕層に増税すればTAX Payerが日本から減り、TAX Eaterばかりの国になる。今は稼げる人を呼び込むために、累進課税の緩和を考えるべきと竹中教授らは言う。

 

 筆者はWeb記事で小泉・竹中改革を非難し、非正規を増やした元凶と言っています。しかし社会制度改革要と言う点では両者は一致、Basic Incomeなどは合意できるかもしれません。一度「朝ナマ」あたりで議論してもらいたいものです。